岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

決断と成り行きの成長物語

2022年09月22日

わたしは最悪。

© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST - SNOWGLOBE - B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

【出演】レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム
【監督】ヨアキム・トリアー

ターニングポイントは後悔の目印 スタートの起点

いま、30歳を迎えようとしているユリア(レナーテ・レインスベ)は、これまでの人生を振り返る。

節目節目にした選択、いまだに方向性すら定まらない現状からすれば、自分は自らの才能を見分けることもできず、無駄な時間を消費したにすぎないのか?

年上の恋人アクセル(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)は、グラフィックノベルライターとして成功し、最近は、身を固めたいという意志をあからさまに向けてくるようになった。

ある夜、招待されてもいないパーティーに紛れ込んだユリアは、若い男アイヴィン(ハーバート・ノードラム)と出会う。運命の人かも知れない…と、ユリアの人生が動き出す。

『わたしは最悪。』はこの悩める女性ユリアの生き方を12の章(+序章終章)に分けて描いている。

問題提起は様々で、例えば女性軽視=差別や、暴力から、表現の自由とか環境問題にまでに関わる忙しなさは、些か、欲張りすぎているのではないかと思わせるのだが、これも主人公たちが感じとる浅めの傍観者視線と同じように、敢えて深く踏み込んではいない。

ユリアの性格もいまひとつ掴みづらい。例えば、男性との議論の場で、激高して噛みついたかと思えば、穏やかなダラダラとしたどうでもいい普段の狭い会話に埋没していたりする。まあ、それも人さまざまで、時が変われば人格も変わるというものかも知れない。

監督はデンマークの新鋭ヨアキム・トリアー。映画ファンなら気がつくかも知れないが、トリアーという姓からは、鬼才ラース・フォン・トリアー監督が思い浮かぶ。実際にはそのとおり、遠い親戚にあたるらしい。

映像表現としては、アニメーションを使ったり、町中を静止させる、ストップモーション=静止画でテクニカルな面を見せる。これは斬新な、とまでは言えないが、ふたりだけの世界を象徴的に見せる甘美な演出としては成功している。

強引な男性視点が気になり、これはあまり使いたくない観点だが、感情移入には遠いのが辛い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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