岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品冬薔薇(ふゆそうび) B! 半端者の再生への物語 2022年09月20日 冬薔薇(ふゆそうび) ©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS 【出演】伊藤健太郎、小林薫、余 貴美子、眞木蔵人、永山絢斗、毎熊克哉、坂東龍汰、河合優実、佐久本宝、和田光沙、笠松伴助、伊武雅刀、石橋蓮司 【脚本・監督】阪本順治 当て書きされたシナリオ 監督vs俳優の魂の激突 とある港町。渡口淳(伊藤健太郎)は不良仲間と連んでいる。喧嘩の場。そこに立ち合うことに躊躇いがあるのか、隙をつかれ怪我を負ってしまう。 中途半端な日常を生きている淳。進路として入学したデザイン学校にも最早、居場所はない。 埋め立て土砂の運搬船で海運業を営む淳の両親は、激減する仕事、従業員の高齢化などの危機感とは背中合せで、ギリギリの経営でありながら、忙しい毎日の生活に追われている。後継者の問題と向かい合うこともできず、そこには諦念の感情が漂っている。 そこに淳が怪我をしたという連絡が入る。 『冬薔薇』は阪本順治監督が、伊藤健太郎を主役に想定し、当て書きされたオリジナル脚本である。 淳の父・義一(小林薫)は気心の知れたベテラン従業員と、卒なく仕事をこなしているが、妻の道子(余貴美子)との関係にも息子をめぐる揺らぐ関係性が見える。将来に希望の光はあるのか? 息子との間にできた溝には過去のわだかまりがあった。 阪本順治は1989年、『どついたるねん』での衝撃のデビュー以来、コンスタントに作品を発表している。その作風は暴力的でありながらも、人情味あるれる人間臭さの際立つ熱いイメージがあるが、実のところは幅広い題材を取り上げバラエティに富んでいる。 例えば、最近の作品を見ても、2019年の『半世界』、『一度も撃ってません』(20)、『弟とアンドロイドと僕』(22)と、様々な題材に取り組んでいることは一目瞭然で、本作を半端者の再生の物語と敢えて分類すれば、『半世界』に近いと言えるのかも知れない。 淳が関係を持つ不良グループは、ヤクザの下っ端のような設定で "ハングレ" のような組織性はなく、チンピラ的なイメージが強い。また、物語の根底にある父と子の確執にも、古典的な親子関係が思い浮かぶ。敢えて古き時代感覚に設定されたものなのか? 責任を取るという重い岐路に直面した淳は、如何にしてそれに面と向かえるか? ラストシーンの淳のサングラス越しの視線は前を向いているのだろうか? 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (98)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2021年11月10日 / 【思い出の映画館】会津東宝(福島県) 歴史と文化の東北の町で子供たちに夢を贈り続けた。 2020年02月05日 / 福知山シネマ(京都府) 城下町にある映画館は幅広い年代から支持されている 2021年08月11日 / 【思い出の映画館】上野セントラル(東京都) 下町のターミナル駅にあった人情味溢れる松竹封切館 more
当て書きされたシナリオ 監督vs俳優の魂の激突
とある港町。渡口淳(伊藤健太郎)は不良仲間と連んでいる。喧嘩の場。そこに立ち合うことに躊躇いがあるのか、隙をつかれ怪我を負ってしまう。 中途半端な日常を生きている淳。進路として入学したデザイン学校にも最早、居場所はない。
埋め立て土砂の運搬船で海運業を営む淳の両親は、激減する仕事、従業員の高齢化などの危機感とは背中合せで、ギリギリの経営でありながら、忙しい毎日の生活に追われている。後継者の問題と向かい合うこともできず、そこには諦念の感情が漂っている。
そこに淳が怪我をしたという連絡が入る。
『冬薔薇』は阪本順治監督が、伊藤健太郎を主役に想定し、当て書きされたオリジナル脚本である。
淳の父・義一(小林薫)は気心の知れたベテラン従業員と、卒なく仕事をこなしているが、妻の道子(余貴美子)との関係にも息子をめぐる揺らぐ関係性が見える。将来に希望の光はあるのか? 息子との間にできた溝には過去のわだかまりがあった。
阪本順治は1989年、『どついたるねん』での衝撃のデビュー以来、コンスタントに作品を発表している。その作風は暴力的でありながらも、人情味あるれる人間臭さの際立つ熱いイメージがあるが、実のところは幅広い題材を取り上げバラエティに富んでいる。
例えば、最近の作品を見ても、2019年の『半世界』、『一度も撃ってません』(20)、『弟とアンドロイドと僕』(22)と、様々な題材に取り組んでいることは一目瞭然で、本作を半端者の再生の物語と敢えて分類すれば、『半世界』に近いと言えるのかも知れない。
淳が関係を持つ不良グループは、ヤクザの下っ端のような設定で "ハングレ" のような組織性はなく、チンピラ的なイメージが強い。また、物語の根底にある父と子の確執にも、古典的な親子関係が思い浮かぶ。敢えて古き時代感覚に設定されたものなのか?
責任を取るという重い岐路に直面した淳は、如何にしてそれに面と向かえるか?
ラストシーンの淳のサングラス越しの視線は前を向いているのだろうか?
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。