岐阜新聞 映画部

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戦争の悲惨さを語り継いでいく大切さを描く心に響く映画

2022年08月30日

島守の塔

©2022 映画「島守の塔」製作委員会

【出演】萩原聖人、村上淳、吉岡里帆、池間夏海、榎木孝明、成田浬、水橋研二、香川京子
【監督・脚本】五十嵐匠

世の中の風潮に流されない冷静な判断、大切な教訓だ

私がいま読んでいる半藤一利著「昭和史」によると「沖縄を奪られれば次は本土決戦ですが、その準備ができていませんから、とにかく沖縄で頑張ってもらうしかないのです。できるだけ敵を倒し、時間を稼いでほしい」と当時の状況が書かれている。

日本は1944年10月フィリピンを奪還されて以降、45年初頭には本土決戦の準備が始まった。しかし当時陸海軍の主力は大陸と南方におり、本土に兵力は皆無に近い状態であったため、沖縄を時間稼ぎのための捨て石にしたのだ。牛島司令官率いる第32軍は進も地獄、退くも地獄の状態となり、兵力の不足は現地で補うこととなった。

『島守の塔』は、沖縄県民の4人に1人が犠牲となった熾烈な沖縄戦にあって、「お国のために死ぬ」と決めていた少女と、県民に「生きろ」と訴えた2人の官僚を中心に、戦争の悲惨さを語り継いでいくことの大切さを描いた心に響く映画だ。

比嘉凛(吉岡里帆)は真面目な軍国少女。「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず」という戦陣訓(1941年1月陸軍大臣・東条英機名で出された訓令)を何度も唱える。40代の官僚たちが「生きろ」というのに、若者は「死を美徳」と考える。軍国主義教育は洗脳教育であり、冷静な判断が出来なくなる。

沖縄県知事・島田叡(享年43歳)(萩原聖人)と荒井退造(享年44歳)(村上淳)は、行政と警察の責任者として県民の命を守っていく。「戦闘に邪魔だ」とばかりに住民の命をないがしろにする第32軍に対し毅然と立ち向かう。

「1億総玉砕」などと国民を道連れにした勝手な論理を振りかざす軍部に対し、「戦争が終わった後の日本」を考え「生きることの大切さ」を教える官僚がいたのは誇らしくもある。

世の中の風潮に流されない冷静な判断は、いまを生きる我々にも大切な教訓となるのだ。

五十嵐匠監督は私と同じ1958年生まれ。同級生として自慢したい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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