岐阜新聞 映画部

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いつまでも戦争を引きずる残酷さを描く極めて優れた反戦映画

2022年08月15日

戦争と女の顔

© Non-Stop Production, LLC, 2019

【出演】ヴィクトリア・ミロシニチェンコ、ヴァシリサ・ペレリギナ、アンドレイ・ヴァイコフ、イーゴリ・シローコフ
【監督・脚本】カンテミール・バラーゴフ

イーヤとマーシャの友情を超えた信頼関係

第二次大戦におけるソ連の戦死者数は約1450万人で、ドイツの約285万人を大きく引き離しダントツである(日本約230万人)。民間人死者数も700万人以上という大きな犠牲者を出している(日本約80万人)。

ソ連で特徴的なのは女性兵士だ。独ソ戦では100万人を超える女性が従軍し、医師や看護師などの側面的支援だけでなく狙撃兵やパイロットなど前線でも戦った。

ウクライナ生まれのノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの代表作「戦争は女の顔をしていない」を原案にした本作は、直接的戦争が終わってもPTSDとしていつまでも戦争を引きずる残酷さを描く極めて優れた反戦映画である。女性兵士をとり上げた点では新鮮であり、妊娠するのは女性しかないという点では深刻でもある。

主演は、戦時中は対空砲手として闘い戦後はレニングラードの病院で看護師として働くイーヤ(ヴィクトリア・ミロシニチェンコ)と、彼女の戦友であるマーシャ(ヴァシリサ・ペレリギナ)で、イーヤは戦地にいるマーシャの子どもを預かって育てている。戦争の傷跡は深く、イーヤは発作が起こると身体がフリーズしてしまうというPTSDを抱え、マーシャは戦傷により子どもが生めない身体になってしまった。

戦争は精神と身体の両方に深刻な後遺症を与える。死が日常化し感覚が麻痺してくる。マーシャの子どもをイーヤがPTSDの発作により死なせてしまっても友情が変わらないのは、よくよく考えると実に残酷で無性に悲しいのだ。

戦後のザワザワした世の中で男にナンパされる2人。身勝手な男のみに無軌道な振る舞いが許される。そしてその若い男がソ連共産党の幹部の息子だという理不尽さ。

イーヤとマーシャの友情を超えて愛情さえ感じる信頼関係は、いったいどういう結末を迎えるのか?

この映画はアカデミー賞のロシア代表になったが、プーチンはどう見たのか気になるところだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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