岐阜新聞 映画部

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極端な性格でエキセントリックな三姉妹を描く家族映画

2022年08月09日

三姉妹

©2020 Studio Up. All rights reserved.

【出演】ムン・ソリ、キム・ソニョン、チャン・ユンジュ
【監督・脚本】イ・スンウォン

父の権威など粉々になってしまい痛快だ

日本の外務省の基礎データによると、韓国の宗教は全人口(約5,163万人)のうち、プロテスタントが約968万人、カトリックが約389万人で全体の約26%がキリスト教徒である。これは東アジアではダントツで、仏教の約762万人を上回り韓国ではトップだ。別の統計によると儒教は0.5%に過ぎない。

本作の三姉妹はプロテスタントである。特に二女のミヨン(ムン・ソリ)は敬虔なというよりも盲目的な信者である。韓国は儒教の国と言われているが宗教というより生活や精神の土台であって、信ずる宗教に関係なく根っこになっているようだ。

『三姉妹』というタイトルからは、日本で言えば『細雪』みたいな日常の悲喜こもごもの生活を会話で結ぶ穏やかな作品をイメージしたがその想像はいい意味で裏切られた。三人とも極端な性格でエキセントリックなのだ。

最初の方は、金髪で酔っぱらいの三女ミオク(チャン・ユンジャ)以外は一見普通で、物語も淡々と始まり若干状況が呑み込めなかったが、次第に際立った性格が芽を吹いてきて物語が鮮明になってくる。

長女のヒスク(キム・ソニョン)は、夫とは分かれているが不良の娘がおり小さな花屋を営んでいる。癌に罹っており、一言目には「ごめんね」と謝る癖がある。

二女ミヨンは裕福な暮らしをしてはいるが夫は浮気をしているようだ。キリスト教を信じるのはいいが押し付けがましく性格はきつい。

三女ミオクは劇作家のようだが酒浸り。子連れの優しい夫がいるが、いつも飲んだくれてわめき散らしている。

この性格バラバラな三人の様子を見るのがこの映画の醍醐味だが、家父長制を体現したようなお父さんの誕生日会で、子どもの頃からの様々な出来事が一挙に噴出し誕生日会は壮絶な修羅場と化してしまう。

このシーンは俳優陣の捨て身の演技も相まって想像以上の迫力だ。父の権威など粉々になってしまって痛快である。満足感は高い。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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