岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人が持つ醜い側面をあぶり出した傑作

2022年07月27日

神は見返りを求める

©2022「神は見返りを求める」製作委員会

【出演】ムロツヨシ、岸井ゆきの、若葉竜也、吉村界人、淡梨、栁俊太郎、田村健太郎、中山求一郎、廣瀬祐樹、下川恭平、前原滉
【監督・脚本】𠮷田恵輔

闇ばかりでなく確かな光も描かれている

吉田恵輔監督の映画はすべて見ているが、一度として失望させられた事はない。殆どの作品を自らのオリジナル脚本で撮り、高水準のクオリティーをキープしているのは驚くべきことです。特に近年の「愛しのアイリーン」と「空白」は傑作で、今や日本映画のトップランナーのひとりと言っても過言ではありません。

最新作の「神は見返りを求める」の題材はユーチューバー。再生回数に悩む底辺ユーチューバーのゆりちゃん(岸井ゆきの)と、彼女に同情して善意で手を貸すイベント会社社員の田母神(ムロツヨシ)が繰り広げる愛憎劇。

現代のSNS社会を巧みに切り取り、恩を仇で返す人間の身勝手さ、善意を踏みにじられた者の憎悪、悪口を吹聴して対立を煽りながら上手く立ち回ろうとする輩等、人が持つ醜い側面を徹底的にあぶり出してみせる。

美しい信頼関係が、第三者が介在し立場が変わって行く中で揺らぎ、やがて亀裂が生じ決定的な対立関係に至る過程を、どす黒いユーモアと切なさが同居するタッチで描いた傑作。

人間不振になりそうな内容の作品だが、「空白」同様、闇ばかりでなく確かな光も描かれている。

これまでの吉田恵輔作品同様、キャスティングが見事にはまり、ムロツヨシと岸井ゆきのにとっては新たな代表作となった。また、珍しく憎まれ役を演じた若葉竜也も新境地と言える好演。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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