岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

民主主義は時間がかかるが「話し合い」だと信じていた

2022年07月25日

ワンダーウォール 劇場版

©NHK

【出演】須藤蓮、岡山天音、三村和敬、中崎敏、若葉竜也、山村紅葉、二口大学、成海璃子
【監督】前田悠希

青臭く、中二病的な若さを全面的に肯定している

京宮大学の学生寮、築100年の近衛寮に暮らす若者たちと、老朽化を名目にした明け渡しを主張する大学側との対立を描いた映画。京都大学吉田寮がモデルだが、架空の名称に変更しているとはいえ、NHKがよくここまで突っ込んだドラマを作れたものだ。

近衛寮は学生が自主的に管理する自治寮となっており、「敬語禁止」「トイレはジェンダーフリー」「会議は全員一致が原則」等、民主的で平等な仕組みを先輩からずっと受け継いできている。壁にはポスターや標語が所狭しと掲示され、布団は適当にひかれ、学生は寝そべりながら本を読んだりただ寝ていたり。娯楽の中心は麻雀。民主主義は時間はかかるが「話し合い」だと信じていた頃。

私が大学生時代(1977~1981)に、数度踏み入れたことのある学生寮を彷彿とさせる、極めて優れたセットである。

中心となるのは4人。出しゃばらないが諦めもしない、リーダーを黙って支えるタイプのキューピー(須藤蓮)。1年生だがまっすぐ熱い男マサラ(三村和敬)。理詰めで相手を説得できるカリスマ三船(中崎敏)。現在の闘いの構図を冷静に判断する理論家志村(岡山天音)。

私たちの人生の中には様々な壁が立ちはだかる。そして信じていたのに、時に裏切られ時に冷めた対応をされて傷ついたりする。

この映画のような「近衛寮存続の危機」に直面した時、どう行動するか?今まで対等だと思っていた当局には明らかな壁を作られ、徹底した塩対応をされる。

ぶつかっていく者、避ける者、逃げる者、やり過ごす者。大学生になって初めての経験で、戸惑い、悩み、叫び、訴える。オレの事わかってくれ!

この映画が素晴らしいのは、青臭く、中二病的な若さを全面的に肯定しているところだ。リアルな関係を中心に、議論を闘わせる。ゾクゾクしてくる。

私が最も心を寄せるのはキューピーだ。威嚇はしないが決して諦めない。結局彼が一番強いと思う。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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