岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

社会性のあるコメディ映画で、バランスの取れた群像劇

2022年07月19日

彼女たちの革命前夜

© Pathé Productions Limited, British Broadcasting Corporation and The British Film Institute 2019

【出演】キーラ・ナイトレイ、ググ・バサ=ロー、ジェシー・バックリー、レスリー・マンヴィル、リス・エヴァンス、グレッグ・キニア
【監督】フィリッパ・ロウソープ

画一的な美の基準で人の外見を判断するのは良くない

世界三大ミスコンテスト(ワールド、ユニバース、インターナショナル)では、現在まで延べ202人が選ばれているが日本人は3人(児島明子、森理世、吉松育美)のみだ。なかでも本作の舞台であるミス・ワールドは0人。ちなみに東アジア勢は他に中国人が2人だけ。世界のミスコンではモンゴロイド顔は不利なようである。

その一方で愛知県一宮市で毎年行われている「一宮七夕まつり」の「ミス七夕」コンテストが、「時流に合ってない」という理由で2022年より廃止されることが決まった。日本では「未婚」の女性の容姿を評価してきたミスコンの廃止の動きが加速している。

本作は、1970年のミス・ワールドを舞台に、女性を外見でランク付けすることに反対するフェミニスト達を中心には描かれている。しかしミスコンを単純に「否」とするのでなく、ミス・ワールドに憧れる女性たちや黒人の美を世界に認められる重要性を理解する女性たちも登場し、バランスのとれた社会性のあるコメディ映画となっている。

最近よく言われる「ルッキズム(外見主義)」の問題。これは「外見で人を判断することは良くない」というよりも「画一的な美の基準で人の外見を判断することは良くない」という方がより近いと思う。

何を美しいと感じるかは人それぞれであるのに、人種や体型を無視して一方的に「これが美」と決めつけられているのに違和感を感じるのだ。ミスコンで東アジア勢が振るわない理由を誰か説明して欲しい。

しかしながら、ミスコンが容姿だけでなく立ち居振る舞いも含めた総合的な判定をしており、それに憧れる女性たちがいることも事実だ。美しく見えるための努力を惜しまない。この彼女たちを認めるのも多様性なのだ。

本作は社会性のあるコメディ映画でありバランスの取れた群像劇でもある。それぞれの思惑が交錯し、どれが正しいのか決して決めつけていない。見ていて気持ちがいい映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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