岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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難関のサイコサスペンスに挑んだ意欲作

2022年07月12日

死刑にいたる病

©2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会

【出演】阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、中山美穂
【監督】白石和彌

硝子越しの怪しげな心理戦に戦慄する

大学生の雅也(岡田健史)のもとに1通の手紙が届く。親しげに綴られたその手紙(=招待状)には、恐るべき罠が仕掛けられていた。

拘置所に出向いた雅也の前に現れたのは死刑囚の榛村大和(阿部サダヲ)で、「久しぶりだね」と語りかけてくる。そこにあるのは旧知の間柄を示す距離感だが、雅也には戸惑いと拒否感が存在する。

榛村は世間を震撼させた24件の殺人で、死刑判決を受けた連続殺人事件の犯人だった。その犯行当時、榛村はパン屋を経営していて、中学生だった雅也は、その店の常連客だった。蘇る記憶には、悩める孤独な中学生に優しげに語りかけてくれる親切な男がいた。そして、今、久しぶりに対峙した男には、あの頃と変わりない "笑顔" があった。

原作の櫛木理宇は、2012年に作家デビュー作「ホーンテッド・キャンパス」で日本ホラー小説大賞で読者賞を受賞、また、同年、「赤と白」で小説すばるの新人賞を受賞しているミステリーホラー作家で、ほかに青春小説も手がけている。「死刑にいたる病」は2015年に「チェインドッグ」の題名で発表され、2017年に改題された。

原作未読のため、あくまでも映画からの見立てだが、舞台となる場所についての特定はない。連続殺人事件のあらましは、ひとつひとつのケースとして説明される。その猟奇的な残酷で血生臭い描写は、リアルに犯人の狂気を映しだすわけだが、一方で、高校生を標的とした24件にも及ぶ連続失踪、殺人事件に現実味はあるだろうか? という疑問が湧かないでもない。が、これは不問というのが正解かも?

24件のケースの内、1件は自分の犯行ではないという告白、真犯人をつきとめてほしいという依頼。この難題に何故か雅也は、引き込まれるように興味を示し、次第に事件にのめり込んでいく。

日本映画では珍しいサイコパスもので、怪しげに展開する心理戦には引き込まれる。特に、硝子越しの対話が、一瞬、指先の触れ合いに変わる描写は秀抜。

何と言っても、阿部サダオの不気味な眼差しで底知れぬ狂気を浮かび上がらせる演技は圧巻。

ただ、真犯人の真相にたどり着く過程が今ひとつ明瞭にならない分、結末の余韻にキレを欠くのが残念。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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