岐阜新聞 映画部

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もっと自分を愛しなさい、そうすれば人生が変わります

2022年07月11日

瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと

©︎2022「瀬戸内寂聴 99 年生きて思うこと」製作委員会

【出演】瀬戸内寂聴
【監督】中村裕

愛に生き、人生に寄り添い、反戦平和を訴え続ける

私が瀬戸内寂聴(晴美)さんの名前を知ったのは新聞連載小説「幻花」(1974~1975)である。その頃の連載には「ドン松五郎の生活」(井上ひさし)、「清張通史」(松本清張)、「岸辺のアルバム」(山田太一)などがあり根気よく読んでいた。いまだに私が大好きで影響を受け続けている方たちである。

なかでも寂聴さんは、私が高校生の頃から老齢年金受給権が発生した昨年までずっと第一線で活躍されており、愛に生き、人生に寄り添い、反戦平和を訴え続けるブレなさ加減は私にずっと勇気を与えてくれていた。

ボケることを知らない不死身の女性だと勝手に思っていたが昨年99歳で亡くなった。

私の田舎ではここまで生きれば大往生であり、黒澤明監督も『夢』の中で笠智衆演じる老人に「あんた、変な顔をするが、本来、葬式は目出度(めでた)いもんだよ。よく生きて、よく働いて、御苦労さんと言われて死ぬのは目出度い」と口にしている。

もちろん人が亡くなるのは淋しい事だが、寂聴さんは天寿を全うしたのだ。寂聴さんロスはあったが、彼女の生き様や名言を胸に刻み反戦平和も受け継がなければ意味が無いと思うのである。

社会的立場のある寂聴さんしか知らなかった私が、本作では普段暮らしている京都・嵯峨野の曼荼羅山 寂庵での私人としての姿を垣間見ることができ、さらに好きになってきた。

寂聴さんに17年間密着した中村裕監督は1959年生まれで、ほぼ私と同年代。監督と目線を同じくして観れば、お母さんのような気もするしギリギリ恋人といってもいい。常にそこにカメラがあるわけで仕事上の付き合いであるとも言えるし、家族を撮っているプライベートフィルムにも見えてくる。

文化勲章までもらった大作家に「ボケてるボケてない」で泣いて貰えるなんて、こんなに嬉しいことはない。

「もっと自分を愛しなさい。そうすれば人生が変わります」。ハイ、そうします。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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