岐阜新聞 映画部

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「銃後の守り」を固める妻たちの合唱団結成の物語

2022年06月21日

シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~

© MILITARY WIVES CHOIR FILM LTD 2019

【出演】クリスティン・スコット・トーマス、シャロン・ホーガン、ジェイソン・フレミング、グレッグ・ワイズ
【監督】ピーター・カッタネオ

謙虚なヒナゲシでなく陽気なヒマワリになるのだ

本作の舞台は、イギリス陸軍最大の基地であるキャタリック駐屯地だ。

軍人はいつでも任務に就ける体制を取るため指定場所に居住する義務がある。例えば自衛隊では「曹長」以下の人は「営内」に住まなければならない。ただし結婚すれば原則「営外」の官舎に住むことができる。

本作を見ているとイギリス軍は、大佐(将校)であっても家族と共に駐屯地内に住んでいる。閉じられた空間の中で戦死する可能性がある共同体での生活。描かれている2009年と言えば、夫や息子が派兵されているアフガニスタンでのタリバン政権との紛争は泥沼化してきたころだ。「銃後の守り」を固める妻たちもいつ届くかもわからない訃報に怯え、駐屯地内は常に緊張感が漂っている。

素人が思い立って合唱団を作り、バラバラだった仲間を一つにまとめ紆余曲折を経つつ最後は感動のフィナーレを迎える。この典型的なワンパターンをどうアレンジするかだが、斬新さはないものの「軍人の妻」という切り口ではうまくいっている。

主役は二人の軍人の妻。大佐の妻でみんなを何とか元気づけようと奮闘するケイト(クリスティン・スコット・トーマス)と、リーダー役で軍曹の妻リサ(シャロン・ホーガン)。

何事も合唱の原則通りに進めようとパートに分けて発声練習するケイトと、みんなが知っている歌を一緒に歌えばいいというリサ。この二人の考えの相違は終盤まで続く。大佐の妻のケイトに従うとはいかないところが面白い。

結果的にはケイトの推す聖歌でなく、リサの推す聞きなれたポップソングが中心となる。シンディー・ローパーの「タイム・アフター・タイム」が何度も使われるなど耳に心地よい。

実話なので最後はうまくいくとわかっているのだが、映画の流れに身をゆだねて幸福な気分に浸ればいい。妻たちの夫や息子を思う気持ちを推し量って感動すればいい。

謙虚なヒナゲシでなく陽気なヒマワリになるのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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