岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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モノクロームの画面が優しく包む小粋な恋愛映画

2022年06月14日

パリ13区

©PAGE 114 - France 2 Cinéma

【出演】ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン、ジェニー・ベス
【監督】ジャック・オディアール

人種も多様性だが恋愛やセックスも多様性の時代

フランスの首都パリは20の行政区に分かれている。観光スポット的にルーブル美術館の1区、ノートルダム寺院の4区、カルチェ・ラタンの5区、エッフェル塔の7区、シャンゼリゼの8区と市の中心部から右回りらせん状に庶民の街20区まで広がっていく。

そして本作の舞台となっているのがパリで一番大規模な中華街がある13区。今ではビルの壁面いっぱいに絵画を描くストリートアートのメッカとなっているそうだ。

原題は『Les Olympiades(レ・ゾランピアード)』。パリの再開発計画で生まれた8つの住宅タワーからなる地区で、"Tokyo""Sapporo"など過去に五輪が開催された地名に因んだ都市名が建物に付けられており、本作の舞台でもある。

この映画、お互いのことをよく知る前にすぐに身体を重ねる。まずは台湾系のエミリー(ルーシー・チャン)とアフリカ系のカミーユ(マキタ・サンバ)。それに白人系のノラ(ノエミ・メルラン)が加わり性的関係な若者の日常が描かれる。

映画ではいまのフランスの恋愛事情が興味深い。複数の人とデートを重ねながら本当に付き合いたい人は誰かを見極める「カジュアルデーティング」。エミリーがハマる、出会い系サイトでパートナーを見つける「マッチングアプリ」。コロナの影響で海外ではポルノ産業の中核を担うといわれるほど急成長したライブチャット「カムセックス」。人種も多様性だが恋愛やセックスも多様性の時代だ。

エミリー、カミーユ、ノラ、三者三様。自由奔放ではあるが満たされない愛に傷ついたり落ち込んだり、フランスの若者も恋愛の悩みは同じだ。

しかしそこに1つだけ真実の愛が存在する。ノラとライブチャットの相手アンバー(ジェニー・ベス)だ。この2人が親密度を増すのにセックスは必要としない。画面越しに真実の愛に到達するのだ。

モノクロームの画面が優しく包む小粋な恋愛映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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