岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

"ふくよかな" を描く画家に迫るドキュメンタリー

2022年06月13日

フェルナンド・ボテロ 豊満な人生

© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved

【監督・脚本・製作】ドン・ミラー

豊穣や多産の暗示か? 健康や富の象徴か?

フェルナンド・ボテロは、1932年、南米コロンビアの北西部にあるアンティオキア州の州都メデジンで生まれた。4歳と時、父のデヴィッドが40歳の若さで亡くなる。その不幸にもめげることなく、10代の半ばにはすでに画家を志したが、叔父の勧めで、闘牛士を養成する学校へ通い始める。しかし、闘牛士の訓練よりも、牛の絵を描くことに夢中になってしまい、そのうち、闘牛場の売店で牛の絵を委託販売した。その後は、地元の商業誌のイラストレーターとして何とか食いつなぎ、画家への夢を追い続けた。

当時のコロンビアは長く続いた植民地支配の影響で、文化的には抑圧された状況下にあった。メデジンには美術館はなく、画廊さえ一軒もなかった。

ボテロはヨーロッパへの留学を目指す…思い立ったが吉日、行動力が何よりの自慢、留学資金が貯まると、ボテロはすぐさまヨーロッパへ旅立つ。 まず、スペインでは、ベラスケスやゴヤの影響を受け、次にパリ、そして、イタリアへと転々とする。

辿り着いたのはフィレンツェで、イタリアン・ルネサンスの画家たちの作品を見て、大学の絵画理論の講義も受けることになる。

フェルナンド・ボテロの絵画に登場する人物は、誰もがふくよかなボディも持ち、圧倒的な存在感で絵画の中にある。その "ふくよかさ" 獲得のインスピレーションを得たのが、このイタリア留学によってもたらされたという。

3年のヨーロッパ留学から帰国した後、コロンビアの首都ボゴタの国立図書館で最初の個展を開催した。同じ年、結婚した直後にはメキシコへの移住を決意する。そこには、南米人としての自らのルーツを追求する目的があった。

『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』は、画家の創作の秘密に迫ったドキュメンタリーだが、ボテロ本人の口から、ある日の決定的な出来事が語られる。自らが描いた静物画の中央に鎮座する "マンドリン" 。丸々とした大きな形、それに比べて小さな開口部…大きく膨れ上がったマンドリンが爆発したその感覚…芸術家の語る言葉は不可解に揺れる。その豊満な世界はあなたには不愉快かも知れないし、幸福感に包まれるかも知れない。さて如何に?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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