岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

唯一無二のスターを見つめたドキュメンタリー

2022年06月06日

オードリー・ヘプバーン

© 2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】オードリー・ヘプバーン、ショーン・ヘプバーン・ファーラー、エマ・キャスリーン・ヘプバーン・ファーラー、クレア・ワイト・ケラー、ピーター・ボクダノヴィッチ、リチャード・ドレイファス ほか
【監督】ヘレナ・コーン

女優という殻を破ってもその潔い生き方に感銘する

『ローマの休日』(ウィリアム・ワイラー監督/1953年/日本公開54年)で、オードリー・ヘプバーンが演じたのは某国の王女アン。過密な公務に疲れ、滞在先を抜け出し、身分を隠したまま、ローマの街を普通の女性として満喫する話。そこで出会うアメリカ人新聞記者ジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)との1日。

王女という立場ならば "冒険譚" になるのだが、アンは、ローマの街を自由に散策する。サンダルを買い、美容院で髪を切り、ジェラートを口にする。王女はサンダルは選ぶことはないし、そもそもサンダルは履かない。ヘアースタイルさえ服装に見合ったとか、相応しいとかが前提になり、ショートカットにするなんてありえない。街中で売っているジェラートを買い、歩きながらそれを食べるなんてお行儀の悪いことはできるはずもない。

これをアンは自らの意思でやり遂げる。一般の女性ならばごく普通のことが、身分が障害となっていたから…目に入る何もかもが新鮮に写った。 映画の最後、アンは記者会見の場に立つ。今回の外遊で1番印象に残った場所は? と問われる。

「ローマです!」ローマ滞在中は体調を壊し公務をキャンセルしていたのに…王女の迷いのない "ローマ" という意外な返答に会場は一瞬騒つく…が、アンの笑顔は全てを掻き消す。全てを諒解させる圧倒的な説得力を込めた笑顔。

『オードリー・ヘプバーン』は『ローマの休日』でアカデミー賞主演女優賞を24歳にして受賞し、一躍、大スターとなった彼女の、栄光の影に隠れていた私生活にも肉薄し、ひとりの女性として、時に母としての生き様を描いたドキュメンタリーである。

個人的にはオードリーとは世代にズレがある。劇場でタイムリーに観た彼女の出演作は、『ロビンとマリアン』(リチャード・レスター監督/1976年)ということになるが、これもタイムラグがあって初公開された年には観ていない。にもかかわらず、オードリーは心のスターであり続けた。

女優オードリーは王女アンと重なる。満面の笑みのなかにある幾つもの感情の起伏。そこに哀しみの欠片を認めたとしても、それを一瞬にして消し去る。その生き様が美しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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