岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人生につまずいた4人が再生するまでを描く、ロケツーリズム映画

2022年05月24日

今はちょっと、ついてないだけ

©2022映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会

【出演】玉山鉄二、音尾琢真、深川麻衣、団長安田(安田大サーカス)/高橋和也 ほか
【監督・脚本】柴山健次

「今はちょっと、上手くないだけ」なのだ

本作の公式ホームページを見ると、千葉県茂原市・長野県千曲市・愛知県幸田町・長崎県島原市が共同製作事業体として製作に関わっている。

これは従来のロケの誘致に力点を置いたフィルムコミッションから一歩進め、観光庁が推進するロケツーリズム「ドラマのロケ地を訪ね風景と食を堪能し、人々のおもてなしに触れ、その地域のファンになってもらうこと!」を目的とする地域活性化事業である。4自治体とも「ロケツーリズム協議会」の正会員であり、地元が積極的に関わっている。映画人口のすそ野を広げるにはマニアとしても嬉しい限りだ。

さてそういった新しい取り組みを背景にした本作であるが、私的には映画の出来としては必ずしも成功したとはいいがたい結果となってしまったと言わざるを得ない。

いわゆる「ご当地映画」のように、サービスショットがあったり、ストーリーと関係なくエキストラが歌って踊りだす等という不自然なシーンは無いが、はっきり言えばストーリーが下手なのである。

人生につまずいた4人が、たまたまシェアハウスで知り合い、お互いの傷口をなめ合いながら再生に向かって進んでいき、「今はちょっと、ついてないだけ」と開き直るまでの物語。コンセプトは悪くない。

しかしこの4人が何ら有機的に関わることなくエピソードの羅列で進んでいく。それぞれの人生の重みは感じられず、ちょっと言い過ぎかもしれないが単なるわがままな人たち。映画の中心が無く「オムニバス映画かよ」と突っ込みたくなってくる。

元人気写真家だった立花を演じた玉山鉄二を始め、リストラされた美容部員・深川麻衣、クビになったテレビマン・音尾琢真、旬が過ぎた芸人・団長安田が、それぞれ存在感のある役柄で見ごたえがあるだけに残念である。

でもこれが「箸にも棒にもかからない」駄作というわけではない。安心して観られる映画ではある。「今はちょっと、上手くないだけ」なのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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