岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

時代の空気感がよく出た、上出来のプライベートフィルム

2022年05月17日

ベルファスト

Ⓒ2021 Focus Features, LLC.

【出演】カトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ、ジュード・ヒル
【監督・製作・脚本】ケネス・ブラナー

思い出はモノクロームだが映画館で観ている映画はカラー

シェイクスピア俳優のケネス・ブラナーは、1960年北アイルランド・ベルファストの労働者階級の家庭に生まれた庶民派である。宗派はプロテスタント。私より2個下、国は違えどほぼ同時代を過ごした同志でもある。そんな彼の少年時代の話。

ベルファストの下町で暮らすバディ少年(ジュード・ヒル)。家の宗旨・宗派など関係なく向こう三軒両隣、仲良く助け合って生活していた。そんな彼が多幸感に包まれていた9歳の夏(1969年8月)、一部の過激なプロテスタント集団がカトリック系住民を襲い始めた。元々潜在的に対立関係にあったカトリック系とプロテスタント系であるが、ついに暴力を伴った攻撃にエスカレートしたのだ。これが1998年の和平合意まで続いたいわゆる「北アイルランド紛争」である。

ケネス・ブラナーはプロテスタントであるが、本作ではどちらにも肩入れしていない。あくまでも目線は彼が9歳だった当時の感じたこと思ったことを描いている。

バディが好きになった勉強が出来るキャサリンはカトリック。悩んだ末に父ちゃんに「カトリックの子と結婚していい?」と聞くと、父は「ヒンズー教でも無神論者でもいい、愛し合っていたら」と答える。

その優しい父は民兵から「お前もプロテストなんだから仲間に入れ!」と言われても断り続け「裏切者!」とののしられる。

これはこの紛争そのものを見事に表している。子ども目線では何故大人が争っているのかさっぱりわからず、争いを好まない人たちも多くいること。

「正義」を主張する一部の声の大きい連中がのさばり、暴力をふるうことが最大目的になってしまっていること。そして従わないと「裏切者」呼ばわりされること。

画面は昔の思い出はモノクロームだが映画館で観た映画はカラー。思い出は頭の中にしかないが映画は繰り返して観られるからだ。

時代の空気感がよく出た、上出来のプライベートフィルムである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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