岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ふたりの少女を清冽に描いたジョージア映画

2018年02月22日

花咲くころ

©Indiz Film UG, Polare Film LLC, Arizona Productions 2013

【出演】リカ・バブルアニ、マリアム・ボケリア、ズラブ・ゴガラゼ、ダタ・ザカレイシュヴィリ
【監督】ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス

戦争、暴力…映画で見つめなおす明日への思い

 何かと騒がしい大相撲界。それでも、初場所は平幕の栃ノ心が優勝。ニューヒーローの登場でプチ盛り上がりとなった。その栃ノ心はジョージアの出身。このジョージアという国がピンとこなかったのだが、これはグルジアの英語読みと知って、ちょっと懐かしい気分に…。78年に岩波ホールで日本初公開された『ピロスマニ』(ギオルギ・シェンゲラヤ監督)はグルジア映画として紹介されたが、これはロシア語吹替版だった。2015年にはデジタルリマスター版『放浪の画家 ピロスマニ』が、37年ぶりにオリジナルのグルジア語版でリバイバル公開された。岩波ホールでは、82年に同じくグルジア映画『落葉』(オタール・イオセリアーニ監督)が公開されている。
 岩波ホールは東京神田神保町にある老舗のミニシアター。通常一般の劇場での公開が難しかった国々、アフリカ、アジア、東ヨーロッパなどの作品を紹介し、アートシアターとして地位を確立した。
 『花咲くころ』はその岩波ホール創立50周年記念作品の第1弾。グルジアは91年にソ連邦から独立。しかし、内戦と紛争に見舞われ、国内は荒廃した。映画はその傷痕の残る92年の春から初夏にかけて、首都トビリシで暮らすふたりの少女の成長を描いている。
 エカには姉がいるが、仲良しというわけでもなく、互いに牽制しあうような姉妹。母親は厳しい反面、娘を大人として尊重しようとする優しさがみえる。家族にとっての問題は“父親の不在”なのだが、それはよくわからないまま。エカの親友ナティアの家は、口うるさい祖母とマイペースな弟と両親との生活だが、酒癖の悪い父親は母親と派手な喧嘩を始める。
 パンの配給に行列をする人々で困窮する生活を描き、学校生活の強権的女教師には体制批判がちらつく。ジョージアというお国柄で断定はできないが、男女間にある格差はかなり酷い。
 祝宴で踊るエカの無表情は厳しく美しく感動的だが、その全体像が見えないのは、この映画の未熟さを象徴しているようで少し残念。

『花咲くころ』は岐阜CINEXで3/2(金)まで公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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