岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品コーダ あいのうた B! アカデミー賞作品賞 3冠に輝く感動作 2022年05月09日 コーダ あいのうた © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS 【出演】 エミリア・ジョーンズ、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、マーリー・マトリン 【監督・脚本】シアン・ヘダー 音のない世界で歌の素晴らしさを伝える力 海上で操業中の小さな漁船。高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、父・フランク(トロイ・コッツアー)、兄・レオ(ダニエル・デュアント)と、早朝からの仕事に忙しい。その手慣れた働きっぷりは日常のことだと分かるが、父と兄が聾者であり、ルビーがふたりの耳となり、"通訳" の役割を担っていることも分かる。港で待ち構えている母のジャッキー(マーリー・マトリン)も聾者だった。 新学期になり、合唱クラブへの入部を決めたルビーは、その歌の才能を顧問であるバーナード先生(エウジェニオ・ダーベス)に認められ、名門バークリー音楽大学への受験を強く勧められ、個人レッスンの時間も用意してくれる。 毎日の生活に追われ、学校でもあからさまな差別に合い、心も折れかけていたルビーだったが、歌うことで夢を叶えたいという思いにも抗えないでいた。 『コーダ あいのうた』は、フランス映画『エール!』(エリック・ラルディゴ監督/2014年/日本公開15年)のリメイクだが、元版の農村で酪農を営む家族という設定から、監督、脚本を手がけたシアン・ヘダーのこだわりにより、港町で漁業を営む家族に変更されている。しかし、その構成、境遇、歌への夢という大筋に変わりはない。 家族の会話は手話が使われている。手話は世界共通ではなく、映画ではアメリカ式が用いられている。日本でよく目にする手話と少し違うのは、大きめで派手な動きに見えるアクションだろう。ルビーの両親の明るい性生活を見せられると、これは個性なのかも知れないと思えてしまうが…。 子どもの頃から、家族を支えてきたことに、あたりまえの感覚が居座ってしまっていること、それ故に、ローズが夢を諦めなければならない非道さに、少なからず、肩を持つ衝動に駆られるが、何とも救いになるのは、両親の明るさと、兄の思慮深さだ。 良き隣人ばかりではないし、理不尽にルールを押し付けてくる世間は案外冷たいが、労働組合を立ち上げる威勢の良い行動力は清々しい。 そして、物語の核でもあるローズの声=歌の素晴らしさを聾者の側から見せ、格差の壁を一瞬、破る映画マジックの工夫は効果的だ。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2017年12月06日 / 岐阜ロイヤル劇場(岐阜県) 昭和の薫りを色濃く残す商店街で古き良き時代の名画に触れる 2022年02月09日 / 岩波ホール(東京都) エキプ・ド・シネマの想い出に感謝を込めて。 2021年01月27日 / 上田映劇(長野県) 数多く映画のロケが行われた街に残る映画館 more
音のない世界で歌の素晴らしさを伝える力
海上で操業中の小さな漁船。高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、父・フランク(トロイ・コッツアー)、兄・レオ(ダニエル・デュアント)と、早朝からの仕事に忙しい。その手慣れた働きっぷりは日常のことだと分かるが、父と兄が聾者であり、ルビーがふたりの耳となり、"通訳" の役割を担っていることも分かる。港で待ち構えている母のジャッキー(マーリー・マトリン)も聾者だった。
新学期になり、合唱クラブへの入部を決めたルビーは、その歌の才能を顧問であるバーナード先生(エウジェニオ・ダーベス)に認められ、名門バークリー音楽大学への受験を強く勧められ、個人レッスンの時間も用意してくれる。
毎日の生活に追われ、学校でもあからさまな差別に合い、心も折れかけていたルビーだったが、歌うことで夢を叶えたいという思いにも抗えないでいた。
『コーダ あいのうた』は、フランス映画『エール!』(エリック・ラルディゴ監督/2014年/日本公開15年)のリメイクだが、元版の農村で酪農を営む家族という設定から、監督、脚本を手がけたシアン・ヘダーのこだわりにより、港町で漁業を営む家族に変更されている。しかし、その構成、境遇、歌への夢という大筋に変わりはない。
家族の会話は手話が使われている。手話は世界共通ではなく、映画ではアメリカ式が用いられている。日本でよく目にする手話と少し違うのは、大きめで派手な動きに見えるアクションだろう。ルビーの両親の明るい性生活を見せられると、これは個性なのかも知れないと思えてしまうが…。
子どもの頃から、家族を支えてきたことに、あたりまえの感覚が居座ってしまっていること、それ故に、ローズが夢を諦めなければならない非道さに、少なからず、肩を持つ衝動に駆られるが、何とも救いになるのは、両親の明るさと、兄の思慮深さだ。
良き隣人ばかりではないし、理不尽にルールを押し付けてくる世間は案外冷たいが、労働組合を立ち上げる威勢の良い行動力は清々しい。
そして、物語の核でもあるローズの声=歌の素晴らしさを聾者の側から見せ、格差の壁を一瞬、破る映画マジックの工夫は効果的だ。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。