岐阜新聞 映画部

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訳のわからない怖さを描く和製フォークホラー

2022年05月02日

N号棟

©「N号棟」製作委員会

【出演】萩原みのり、山谷花純、倉悠貴、岡部たかし、諏訪太朗、赤間麻里子、筒井真理子
【監督・脚本】後藤庸介

集団心理を巧みに操って洗脳する、一番怖いのは人間なのだ!

2000年頃、岐阜県T町の町営住宅でポルターガイスト現象が起こり、大手メディアが「幽霊?住民避難騒ぎ、祈祷師呼び厄払い」と報じたことで大騒ぎになったことがある。テレビでは有名ニュース番組でも報道されワイドショーでは連日特集が組まれた。

『N号棟』はオカルト嫌いな私でも記憶に残る著名な幽霊団地事件を基に、死恐怖症(タナトフォビア)を抱える大学生の史織(萩原みのり)が、不気味な団地の中で起こる不可思議な人々の怪しげな振る舞いを通じて、死と生の意味を考えていかざるを得なくなるホラー映画だ。

すぐに思い浮かべたのは『ミッドサマー』(2019)だ。アメリカの大学生グループがスウェーデンの夏至祭に招かれた際の恐怖体験映画で、伝統や風習を持つ土着の人々に翻弄される訪問者の恐怖を描いた所謂「フォークホラー」だが、本作は廃墟同然の団地に住み着く人々がもたらす「訳の分からない怖さ」を描いている点でも和製フォークホラーと言えるのだ。

主役はエゴイスティックな史織と、元カレで優柔不断な啓太(倉悠貴)、友人で啓太の今カノの真帆(山谷花純)の3人。団地へ向かう導入部はホラー映画らしい不気味な雰囲気で、背筋がゾクゾクしてくる。つかみはOKだ。

廃墟と思っていた団地に住む不自然に明るくやけにフレンドリーな住民たち。この限られた空間に迷い込んだ3人の大学生は、迷宮の中に閉じ込められたよう。いつでも逃げ出せるのに何故か団地に残ってしまう。そして白っぽい装束に身を包む集団に飲み込まれていく啓太と真帆。

集団のカリスマ的リーダーである加奈子を演じた筒井真理子の圧倒的怪演は、「死ね!」という決定的な言葉が示すように、集団心理を巧みに操って洗脳していく怖さ、恐ろしさを見事に表している。一番怖いのは人間なのだ!

「考察型恐怖体験ホラー」というには考える材料が若干不足しているが、チャレンジングな映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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