岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

映画史を彩る怪作、いつまでも記憶に残る映画

2022年05月03日

TITANE/チタン

© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

【出演】ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル
【監督】ジュリア・デュクルノー

痛々しい殺人方法で観客の脳髄をえぐってくる

昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門は壮観だ。わが『ドライブ・マイ・カー』が日本映画史上初の脚本賞を受賞したのはもちろん、グランプリは『英雄の証明』。監督賞は『アネット』のレオス・カラックス。男優賞は『ニトラム』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。審査員賞は『メモリア』。

そしてその激戦の中を見事勝ち抜きパルム・ドールに輝いたのが『TITANE チタン』である。

映画祭のコンペでは審査員の好みが反映される傾向が強いが、今回の審査委員長はスパイク・リー。ソン・ガンホを含む女性5名・男性4名の計9名が審査に当たった。

発表後の記者会見では記者団からチョイスの理由を聞かれたスパイク・リーが「キャデラックを相手に(ヒロインが)妊娠するような映画をこれまで見たことがなかった(笑)」と答えている。

私の鑑賞後感は率直に言って「唖然茫然」である。とんでもないものを観てしまったとの印象で、頭の中を整理するのにしばらく時間がかかってしまった。

子どもの頃の交通事故の治療で頭にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア(アガト・ルセル)が主人公という時点ですでに変態チックであるが、彼女が連続殺人鬼で、その殺人方法が鋭利な棒を耳に突き刺したり椅子の脚を口の中に突っ込むという痛々しさで、観客の脳髄をえぐってくる。

行方不明の息子を探す消防士のヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)との奇妙な交流は、ファンタジーを超えてある種ホラーである。もはや観客に理解してもらおうなどとは思ってない。

落ち着いて考えてみると、肉体が鉄に浸食されていく男の戦いを描いた塚本晋也の『鉄男』(1989)や自動車事故の衝撃を通して性的快感を得るというクローネンバーグの『クラッシュ』(1996)の系譜に繋がる映画であり、映画史を彩る怪作なのだと実感が湧いてきた。いつまでも記憶に残る映画となるであろう。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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