岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品TITANE/チタン B! カンヌ映画祭最高賞受賞の異色バイオレンス映画 2022年05月03日 TITANE/チタン © KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020 【出演】ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル 【監督】ジュリア・デュクルノー 冷たい金属と流れ出す黒いオイルのイメージは狂気を象徴する 走行中の車、運転しているのは父親で、同乗しているのは、まだ、幼い娘。仲の良くない様子で、たちまち口喧嘩に発展する。と、そのはずみで、車は衝突事故を起こしてしまう。ー 頭部に怪我を負った少女は、何とか一命をとりとめる。 倉庫の様な建物の中、大音量の音楽とともに、セクシーなボディスーツ姿の女性によるダンスショーが行われている。囃し立てる観客の男たち。ダンサーは成長したあの少女アレクシア(アガド・ルセル)だった。 この後、ショーの出演を終えたアレクシアにファンだと名乗る男が近づき…銀色に輝く簪のような髪飾りを怪しげに操るアレクシアが引き起こす出来事には、手慣れた職人のような手際の良さと、行き当たりばったりの発作的は成り行きという両面が見える。 アレクシアの右耳の上の側頭部には、剥き出しの金属の断片が盛り上がるように見えている。それは幼い頃に負った怪我の治療のため、頭蓋骨に埋め込まれた "チタン" 製のプレートだった。 前半、映画はアレクシアが起こす行為を淡々と描く。淡々というのはアレクシアの冷めたように見える態度から読み取れる姿で、行為はことごとく血生臭く、グロテスクにエスカレートしていく。先端恐怖症ならば思わず目を逸らしたくなるし、身体的な痛みを直接描写する画には、反射的に目を閉じてしまう。 監督は本作が長編2作目となる、ジュリアン・デュクルノー。第74回カンヌ映画祭で『ピアノ・レッスン』(93/日本公開94年)のジェーン・カンピオン以来、2人目のパルムドール=最高賞受賞の女性監督となった。 しかし、映画はグロテスクなまでに暴力的で、ともすれば、映画祭の受賞作としては異例な内容だと言えるのだが…。 指名手配となったアレクシアは逃亡者となる。ここからの後半突入も規格外の展開が続く。新たに出会う消防署長のヴァンサン(ヴァンサン・ランドル)との偽りの親子関係は、背徳感を孕んだ危ういバランスで、崇高ささえ感じさせる瞬間をむかえる。 この種の五感に官能する映画は、共感とか理解からは著しく遠のく、もはや感覚で受け止めるしかない。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (12)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2019年03月27日 / シネマノヴェチェント(神奈川県) 埋もれた映画に愛の手を…商店街の中のこだわり名画座 2018年04月25日 / あまや座(茨城県) 日本の原風景が残る街で映画を観る贅沢 2024年06月05日 / shimane cinema ONOZAWA(島根県) 山陰の地方都市に復活した街の小さな映画館。 more
冷たい金属と流れ出す黒いオイルのイメージは狂気を象徴する
走行中の車、運転しているのは父親で、同乗しているのは、まだ、幼い娘。仲の良くない様子で、たちまち口喧嘩に発展する。と、そのはずみで、車は衝突事故を起こしてしまう。ー 頭部に怪我を負った少女は、何とか一命をとりとめる。
倉庫の様な建物の中、大音量の音楽とともに、セクシーなボディスーツ姿の女性によるダンスショーが行われている。囃し立てる観客の男たち。ダンサーは成長したあの少女アレクシア(アガド・ルセル)だった。
この後、ショーの出演を終えたアレクシアにファンだと名乗る男が近づき…銀色に輝く簪のような髪飾りを怪しげに操るアレクシアが引き起こす出来事には、手慣れた職人のような手際の良さと、行き当たりばったりの発作的は成り行きという両面が見える。
アレクシアの右耳の上の側頭部には、剥き出しの金属の断片が盛り上がるように見えている。それは幼い頃に負った怪我の治療のため、頭蓋骨に埋め込まれた "チタン" 製のプレートだった。
前半、映画はアレクシアが起こす行為を淡々と描く。淡々というのはアレクシアの冷めたように見える態度から読み取れる姿で、行為はことごとく血生臭く、グロテスクにエスカレートしていく。先端恐怖症ならば思わず目を逸らしたくなるし、身体的な痛みを直接描写する画には、反射的に目を閉じてしまう。
監督は本作が長編2作目となる、ジュリアン・デュクルノー。第74回カンヌ映画祭で『ピアノ・レッスン』(93/日本公開94年)のジェーン・カンピオン以来、2人目のパルムドール=最高賞受賞の女性監督となった。
しかし、映画はグロテスクなまでに暴力的で、ともすれば、映画祭の受賞作としては異例な内容だと言えるのだが…。
指名手配となったアレクシアは逃亡者となる。ここからの後半突入も規格外の展開が続く。新たに出会う消防署長のヴァンサン(ヴァンサン・ランドル)との偽りの親子関係は、背徳感を孕んだ危ういバランスで、崇高ささえ感じさせる瞬間をむかえる。
この種の五感に官能する映画は、共感とか理解からは著しく遠のく、もはや感覚で受け止めるしかない。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。