岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ふたりの女性の秘められた恋の行方

2022年04月28日

ふたつの部屋、ふたりの暮らし

© PAPRIKA FILMS / TARANTULA / ARTÉMIS PRODUCTIONS - 2019

【出演】バルバラ・スコヴァ、マルティーヌ・シュヴァリエ、レア・ドリュッケール、ミュリエル・ベナゼラフ、ジェローム・ヴァレンフラン
【監督・脚本】フィリッポ・メネゲッティ

向かい合わせの部屋の扉を無くすことがふたりの夢

南フランス、地中海から10キロほどの内陸にモンペリエはある。人口は27万人ほどだが、市内には1364年に創建された、サンピエール大聖堂が聳える、古都の風情のある静かな街。

その街に建つ清楚なアパルトマンの最上階が舞台。向かい合った部屋に別々に暮らすニナ(バルバラ・スゴヴァ)とマドレーヌ=マド(マルティーヌ・シュヴァリエ)。ともにひとり暮らしだが、マドには先立たれた夫や独立した子どもたちとの思い出に包まれた部屋だった。

互いの部屋を行き来しながら暮らす、その隣人以上の付き合いから、ふたりが恋人同志だとわかる。そして、ひた隠ししてきた関係の殻を破り、自由な未来を夢見ていることも。

アパルトマンの部屋を売り、イタリア・ローマへ移住する。計画は順調に進んでいるように見えたが、マドは子どもたちに真実を伝え、部屋を売却することを切り出せないでいた。

それを知ったニナは、マドを問い詰めてしまう。

そして、突然、マドの身体を病魔が襲う。

ニナを演じるバルバラ・スゴヴァは、『ローザ・ルクセンブルク』(マルガレーテ・フォン・トロッタ監督/85=日本公開87年)で、カンヌ映画祭女優賞を受賞した国際的名優。

マドレーヌを演じたマルティーヌ・シュヴァリエは、フランスの国立劇場コメディ・フランセーズ所属のベテラン女優で、ふたりの重厚な演技アンサンブルは秀抜。

監督、脚本(共同)のフィリッポ・メネゲッティは、本作が初の長編とは思えないほどの繊細な演出ぶりを見せる。特に、アパルトマンの部屋の限られた光を巧みに利用した重厚な絵作りや、部屋の行き来、扉の開閉を利用した、サスペンスタッチの編集の切れ味も素晴らしい。

図らずも、ニナが老いたレズビアンが差別される現状に、感情を爆発させるシーンが登場するが、LGPTQ先進のヨーロッパと言えども、マドレーヌの子どもたちの反応が象徴する意識が解消されるのは、未だに幻想なのかも知れない。故にふたりが決断する道行はあまりに切ない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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