岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品猫は逃げた B! コラボレーション第2作、夢のような時間をありがとう 2022年04月26日 猫は逃げた ©2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ 【出演】⼭本奈⾐瑠、毎熊克哉、⼿島実優、井之脇海、伊藤俊介(オズワルド)、中村久美、オセロ(猫) 【監督】今泉⼒哉 パンチのあるセリフと修羅場シーンの威力 城定秀夫と今泉力哉のコラボレーション企画L/R15の2作目。「愛なのに」の監督、脚本を入れ替えたのが本作「猫は逃げた」である。個人的には「愛なのに」の方が好みなのだが、本作もすこぶる面白い。 メインとなるのは週刊誌記者の広重(毎熊克哉)と妻で漫画家の亜子、広重の不倫相手の同僚真実子(手島実優)、亜子の不倫相手で担当編集の松山(井之脇海)の4人。一匹の猫を通じて交錯する彼らの関係性。この出来事の裏ではこんなことが…実は…実は…で繋がっていく脚本。ファンタジックなまでに心地良い大団円。河原でのシーンが登場するなど水が絡むシチュエーションの構築も含めて城定シナリオの真骨頂。いくら不倫していても、ふとした瞬間に夫婦として息ピッタリな姿をみせる広重と亜子。結局二人は似たものどうしということがシチュエーションの反復で上手く描かれる。そんな夫婦に振り回される真実子と松山だが、彼らも負けず劣らずの面倒くささ。純粋な想いがなかなかの暴走をみせてくれる。そんな2人が共犯関係を築いていく様子がまたまた実は…実は…の面白さ。 ラストの修羅場シーンは今泉力哉映画にはこういうシーンが必要だと書いたのだとか。ここで威力を発揮するのが監督の特徴であるフィックス長回し。画面の端から端まで人物が並んだショットがバシッと決まっている。このシーンで放たれるセリフの数々がセンス抜群だ。どれもこれもパンチが効いていて耳に残るものばかり。あまりの面白さに何度声を出して笑ったことか。独特なセリフの応酬はこのシーンを大幅に書き足した今泉力哉監督の手に寄るものが大きいだろう。そのほかにも美しいロングショットやじっくりと関係性をみせる丁寧な描写の積み重ねなど見どころいっぱい。フレームを出たり入ったりするのが城定演出ならばフレーム内で動き回るのが今泉演出。本作でも登場人物がフレーム内で言葉をぶつけ合い、時にドタバタを繰り広げる。 そして本作でもやはりキャスト陣が本当に素晴らしい。長回しに耐えうる演技力と面倒で自分本位ながらも憎めないキャラクターに仕上がっているのは表情が、仕草が、雰囲気がとても魅力的だから。ふと自分の内面を見せつけられているかのようなところも含めて、それぞれにとても愛おしく思える瞬間がたくさんある。 と、本作も魅力たっぷりの映画に仕上がっている。才能ある二人が組んだ企画「L/R15」、私は存分に楽しませてもらった。夢のような時間をありがとう。 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 100% 観たい! (2)検討する (0) 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2019年07月17日 / 千石劇場(長野県) 長野県最古の鉄筋建築物として重厚な姿を残す映画館 2018年04月11日 / 日田シネマテーク・リベルテ(大分県) 山間にある水郷の街で、映画に向き合う至福の時間 2020年05月27日 / 舞鶴八千代館(京都府) 日本海の港町で映画の灯を守り続ける映画館 more
パンチのあるセリフと修羅場シーンの威力
城定秀夫と今泉力哉のコラボレーション企画L/R15の2作目。「愛なのに」の監督、脚本を入れ替えたのが本作「猫は逃げた」である。個人的には「愛なのに」の方が好みなのだが、本作もすこぶる面白い。
メインとなるのは週刊誌記者の広重(毎熊克哉)と妻で漫画家の亜子、広重の不倫相手の同僚真実子(手島実優)、亜子の不倫相手で担当編集の松山(井之脇海)の4人。一匹の猫を通じて交錯する彼らの関係性。この出来事の裏ではこんなことが…実は…実は…で繋がっていく脚本。ファンタジックなまでに心地良い大団円。河原でのシーンが登場するなど水が絡むシチュエーションの構築も含めて城定シナリオの真骨頂。いくら不倫していても、ふとした瞬間に夫婦として息ピッタリな姿をみせる広重と亜子。結局二人は似たものどうしということがシチュエーションの反復で上手く描かれる。そんな夫婦に振り回される真実子と松山だが、彼らも負けず劣らずの面倒くささ。純粋な想いがなかなかの暴走をみせてくれる。そんな2人が共犯関係を築いていく様子がまたまた実は…実は…の面白さ。
ラストの修羅場シーンは今泉力哉映画にはこういうシーンが必要だと書いたのだとか。ここで威力を発揮するのが監督の特徴であるフィックス長回し。画面の端から端まで人物が並んだショットがバシッと決まっている。このシーンで放たれるセリフの数々がセンス抜群だ。どれもこれもパンチが効いていて耳に残るものばかり。あまりの面白さに何度声を出して笑ったことか。独特なセリフの応酬はこのシーンを大幅に書き足した今泉力哉監督の手に寄るものが大きいだろう。そのほかにも美しいロングショットやじっくりと関係性をみせる丁寧な描写の積み重ねなど見どころいっぱい。フレームを出たり入ったりするのが城定演出ならばフレーム内で動き回るのが今泉演出。本作でも登場人物がフレーム内で言葉をぶつけ合い、時にドタバタを繰り広げる。
そして本作でもやはりキャスト陣が本当に素晴らしい。長回しに耐えうる演技力と面倒で自分本位ながらも憎めないキャラクターに仕上がっているのは表情が、仕草が、雰囲気がとても魅力的だから。ふと自分の内面を見せつけられているかのようなところも含めて、それぞれにとても愛おしく思える瞬間がたくさんある。
と、本作も魅力たっぷりの映画に仕上がっている。才能ある二人が組んだ企画「L/R15」、私は存分に楽しませてもらった。夢のような時間をありがとう。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。