岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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好きという気持ちを堪能できる、娯楽寄りの今泉映画

2022年04月20日

猫は逃げた

©2021「猫は逃げた」フィルムパートナーズ

【出演】⼭本奈⾐瑠、毎熊克哉、⼿島実優、井之脇海、伊藤俊介(オズワルド)、中村久美、オセロ(猫)
【監督】今泉⼒哉

4人が一堂に会する修羅場は、今泉ワールドの真骨頂

「どんなジャンルやお題でも傑作に仕上げる、"映画料理人"とでも言うべき天才職人監督」(『アルプススタンドのはしの方』プロフィール)の城定秀夫がシナリオを書き、「“正解のない恋の形”を模索し続ける恋愛映画の旗手」(『愛がなんだ』プロフィール)の今泉力哉が監督したコラボ企画第2弾が『猫は逃げた』だ。

今泉ワールドの住人たちを、城定監督作でものの見事に発展躍動させた『愛なのに』に引き続き、本作は「僕はかなり今泉さんを研究していた」という城定さんが、今泉ワールドの世界や作風に寄せてシナリオを書いたアート系というより娯楽寄りの今泉映画である。

両作とも結婚がテーマだが、『愛なのに』が結婚前に対して『猫は逃げた』は結婚後・離婚前を描いている。キャラは共通しており、人間の弱さ丸出しで優柔不断だったり言い訳名人の小市民たちの滑稽な生き様を笑いに包んで送り出している。

私の家では猫を3匹飼っているが劇中のネコのカンタみたいに懐いてくれない。チュール目当てに私の元にやってくるが食べ終わったら脱兎のごとく離れていく。

猫ってこの距離感がいいのだが、本作の4人のどちらかというとクズ寄りの人間たちも猫と同じようにつかず離れずだ。離婚にあたって「猫の親権」という、ホントしょーもないことを真剣に話し合うなんて、「離婚する気無くネ?」なのである。でもこのグズグズさ加減が私には何とも心地好いのだ。

コラボによる功績は今泉映画では珍しい回想シーンがあったり大団円で終わったりするところだが、最終盤の4人が一堂に会する修羅場は今泉映画の真骨頂である。シナリオは城定さんだとしても完全にいつもの今泉節なのだ。緊張感のあるワンシーンワンカットは見事で素晴らしい。

コラボ企画による2作。甲乙つけがたいが好みで言えば『愛なのに』が僅差で勝ったかなという感じ。でもいずれにしろ好きという気持ちを堪能できる2作だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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