触れられたくなかった過去を暴いた映画、でもいまも同じことが!
2022年04月18日
親愛なる同志たちへ
©Produced by Production Center of Andrei Konchalovsky and Andrei Konchalovsky Foundation for support of cinema, scenic and visual arts commissioned by VGTRK, 2020
【出演】ユリア・ビソツカヤ、アンドレイ・グセフ
【監督・脚本】アンドレイ・コンチャロフスキー
革命の目的はどこへ行った?
ロシアによるウクライナ侵攻はロシア映画界にも影響している。『ウルガ』や『太陽に灼かれて』などの巨匠ニキータ・ミハルコフ監督(76)にウクライナの裁判所が逮捕状を出した。「戦争を支持する発言を行った」という罪だ。
彼の実兄が本作の監督であるアンドレイ・コンチャロススキー氏(84)で、共にソ連時代からロシアを代表する映画監督である。この2人の父は本作の冒頭とラストに高らかに流れるロシア国歌(ソ連国歌)の作詞家セルゲイ・ミハルコフ氏で、2人ともロシアのエリートであることは間違いない。
では本作がロシア偉大なりというようなプロパガンダ映画かというと、そうではない。むしろ触れられたくなかった痛恨の過去、1962年のノボチェルカッスク虐殺事件を暴き出した映画だ。ならばさぞかしロシア政府に邪魔されたかというとそれもそうではない。プーチンはこの虐殺を認めて追悼式典まで開いており、すべてはソ連共産党がやったことと批判しているのだ。
米アカデミー賞のロシア代表にも選出されているし、さぞかしプーチンも喜んでいることだろう。なにしろラストでは奇跡の再会を果たした2人が「でも、これからいい世の中になるよ」と言っているのだ。
しかしプーチンよ、よく見たまえ。君はこれと全く同じことをやっているのだから!1962年から60年たっても、これっぽっちも「いい世の中」なんかになってないのだから!自分のことは見えてないのだ!
この映画を観ていてソ連共産党独裁時の覇権主義、全体主義は目を覆うばかりだ。官僚主義や権威主義は労働者や農民が主人公の国を作るのだという革命の目的を過去のもとに追いやってしまっている。
政府や党を無謬(むびゅう)と信じ人民をよくするために働く真面目な母とそこに感覚的に疑問を感じるている娘。監督は目の前で起きている暴力には、命を守ることだけを基準に行動しようと言っているのである。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。