岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ゴヤの名画と優しい泥棒 B! 消えた名画にまつわる嘘のような実話 2022年04月12日 ゴヤの名画と優しい泥棒 ©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020 【出演】ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード 【監督】ロジャー・ミッシェル 名匠ロジャー・ミッシェルの遺作 ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、日本語で翻訳表記すれば国立美術館となる。設立されたのは1824年で、13世紀から1900年代までの作品、2300点以上を所蔵している。コレクションは一般公開され、入場料は特別展を除けば通常は無料。その世界屈指の美術館が歴史上一度だけ絵画盗難の災難に遭遇している。 『ゴヤの名画と優しい泥棒』は、この盗難事件に基づいたお話である。 1961年イギリスのニューカッスル。60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン(ジム・ブロードベント)は、妻のドロシー(ヘレン・ミレン)と息子のジャッキー(フィオン・ホワイトヘッド)の3人暮らし。仕事の傍ら、いや自らは、本職と自認している戯曲の執筆に励んではいるが、未だ世に認められてはいない。曲がった事が許せない一本気な性格で再就職先のパン工場では、理不尽な差別パワハラの上司に反抗して、再び職を失い失業してしまう。 公共放送=BBCの受信料の一律支払いには断固反対で、自らも、テレビをBBCが受信できないように改造して、その主張を曲げようとはしない。 何だか日本の何処かでも聞いたことのあるような話だが、公共放送料金の支払いは、わが国では裁判沙汰にしても義務と裁定されてしまう。 イギリスでは未払いは、刑務所行きになるのだから、何とも手厳しい。 そんな時、ナショナル・ギャラリーがゴヤの名画「ウェリントン公爵」を高額で買い付けたことがニュースとなる。そこで使われたのは多額の税金…ケンプトンは立ち上がる。 高齢者による単独犯という、嘘のような名画盗難事件から次のステージとなる裁判の件、ここで繰り広げられるイギリス特有のユーモアを交えた会話の応酬が実に面白い。このセンスがあるならば、ケンプトンが劇作家として成功しないことが不思議に思える程だ。 そして、名優ふたりによる夫婦の軽妙洒脱な会話劇は名人芸の域。娘を亡くした哀しみを共有し、心が通い合う過程も見事に描かれている。そしてラストに用意されている真相…オチも粋だな〜。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (5)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2021年01月27日 / 上田映劇(長野県) 数多く映画のロケが行われた街に残る映画館 2023年05月31日 / 【思い出の映画館】七ぶらシネマ通り(静岡県) 静岡市内にあった明治時代から続く映画館通り。 2021年11月24日 / 【思い出の映画館】テアトル石和(山梨県) ぶどう園の真ん中にポツンと佇む映画館。 more
名匠ロジャー・ミッシェルの遺作
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、日本語で翻訳表記すれば国立美術館となる。設立されたのは1824年で、13世紀から1900年代までの作品、2300点以上を所蔵している。コレクションは一般公開され、入場料は特別展を除けば通常は無料。その世界屈指の美術館が歴史上一度だけ絵画盗難の災難に遭遇している。
『ゴヤの名画と優しい泥棒』は、この盗難事件に基づいたお話である。
1961年イギリスのニューカッスル。60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン(ジム・ブロードベント)は、妻のドロシー(ヘレン・ミレン)と息子のジャッキー(フィオン・ホワイトヘッド)の3人暮らし。仕事の傍ら、いや自らは、本職と自認している戯曲の執筆に励んではいるが、未だ世に認められてはいない。曲がった事が許せない一本気な性格で再就職先のパン工場では、理不尽な差別パワハラの上司に反抗して、再び職を失い失業してしまう。
公共放送=BBCの受信料の一律支払いには断固反対で、自らも、テレビをBBCが受信できないように改造して、その主張を曲げようとはしない。
何だか日本の何処かでも聞いたことのあるような話だが、公共放送料金の支払いは、わが国では裁判沙汰にしても義務と裁定されてしまう。
イギリスでは未払いは、刑務所行きになるのだから、何とも手厳しい。
そんな時、ナショナル・ギャラリーがゴヤの名画「ウェリントン公爵」を高額で買い付けたことがニュースとなる。そこで使われたのは多額の税金…ケンプトンは立ち上がる。
高齢者による単独犯という、嘘のような名画盗難事件から次のステージとなる裁判の件、ここで繰り広げられるイギリス特有のユーモアを交えた会話の応酬が実に面白い。このセンスがあるならば、ケンプトンが劇作家として成功しないことが不思議に思える程だ。
そして、名優ふたりによる夫婦の軽妙洒脱な会話劇は名人芸の域。娘を亡くした哀しみを共有し、心が通い合う過程も見事に描かれている。そしてラストに用意されている真相…オチも粋だな〜。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。