岐阜新聞 映画部

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照生の誕生日7月26日を、定点観測的に描くラブストーリー

2022年04月14日

ちょっと思い出しただけ

©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

【出演】池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実/尾崎世界観/國村隼(友情出演)/永瀬正敏
【監督・脚本】松居大悟

気恥ずかしくて照れくさい、この題名が大好きだ

私が本作のモチーフになっている『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1992)をゴールド劇場で観たのは地図会社時代の34歳のとき。世界5つの都市で同時に走り出すタクシー内で起こる5つの人間模様を描いたオムニバス形式ドラマの傑作だ。1992年のマイベストテンでは10位に選んでいる(ちなみにマイベストワンは『ポンヌフの恋人』だった)。

クリープハイプの尾崎世界観が、自身のオールタイムベストに上げる『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て作った楽曲が「ナイトオンザプラネット」。二人の甘く切ない思い出を一緒に観たこの映画に託した歌詞で、別れてから久しぶりに一人で観てみたらなんか違ってて「ちょっと思い出しただけ」と歌っている。

でこの楽曲を基に松居大悟監督が描いた映画が『ちょっと思い出しただけ』。尾崎世界観の歌詞にインスパイアされた初の完全オリジナルラブストーリーである。

主演は怪我でダンサーの道を諦め照明技師として働く照生(池松壮亮)とタクシー運転手の葉(伊藤沙莉)。物語は照生の誕生日である7月26日に起こった出来事を、コロナ禍の2021年から6年前の2016年まで1年ずつさかのぼって定点観測的に描いていく。

2016年舞台の打ち上げで出会う2人。2017年一緒に寝覚め『ナイト・オン・ザ・プラネット』を観る2人、誕生日プレゼントはバレッタ(髪留め)だ。2018年照生が怪我をしすれ違い始める2人。2019年ダンサーを諦め髪をバッサリ切る照生。気まずくなり別れる2人。2020年猫のもんじゃがバレットを引っ張り出す。2021年舞台でひとりステップを踏む照生と、遠くから垣間見る葉。

描かれていない7月26日以外の1年間に何があったのか?と過ぎ去った日々を想像するだけでもこの映画をもっと楽しめるのだ。

『ちょっと思い出しただけ』

気恥ずかしくて照れくさい、この題名が大好きだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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