岐阜新聞 映画部

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トラウマをどう受け入れどう乗り越えるかを描いた反ナチ映画

2022年04月12日

マヤの秘密

© 2020 TSWK Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】ノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン、クリス・メッシーナ、エイミー・サイメッツ
【監督・脚本】ユヴァル・アドラー

密室で繰り広げられる心理戦、マヤの出した結論は?

ナチスによるホロコーストは、約600万人のユダヤ人虐殺だけでなく、障害者・同性愛者・政治的敵対者・宗教的異分子に加え約20万人のロマ族虐殺にも及んだ。

本作は1950年代後半のアメリカ郊外の街を舞台に、ロマ族出身のマヤ(ノオミ・ラパス演)が、少女時代にナチス兵から受けた凌辱や妹の死を、どう受け入れどう乗り越えるかを描いたスリラー仕立ての反ナチ映画である。

戦争の極限状態になると平時では心優しき市民だった兵隊が、殺さなければ殺されるという恐怖にかられ面前の人間を見境なく殺してしまう。ある種トランス状態での行動だと思うが、いたぶられたり殺されたりされた側はたまらない。ココロの傷として一生付きまとうトラウマになってしまうのだ。

マヤのメンタルの変調の理由は当初は夫もわからない。これはマヤが秘密にしていたというよりも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状のひとつ「トラウマの出来事にフタをして思い出さないようにしている」からだと思う。ココロのバランスが崩れる大きな要因だ。

そこへ自分のトラウマの要因となった犯人が突然現れる。するとフラッシュバックがおこり今までフタをしていた記憶が突然蘇ってしまう。しかもそれは断片的にだ。

捕らえて監禁したトーマス(ジョエル・キナマン)がその犯人だったのか人違いなのか?妄想なのか現実なのか?

密室で繰り広げられる心理戦はその結末が最後までわからず、ギリギリの極限状態の中で、マヤはトーマスをいったいどうしたいのか?をハラハラしながら見つめていく。

マヤは「何があったのか教えてくれ」と迫るがトーマスは「人違いだ」と言い張る。マヤの欠落した記憶の中にある「私が妹を見捨てたのかどうか」を確かめたいという気持ちは痛いくらいわかる。

復讐で心の傷は癒えるのか?この映画を見ているとトラウマをどう自分の中に落とし込むかが大切だとわかるのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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