岐阜新聞 映画部

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優しい泥棒の政治風刺、ブリティッシュコメディの秀作

2022年04月11日

ゴヤの名画と優しい泥棒

©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020

【出演】ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード
【監督】ロジャー・ミッシェル

困った父さんとしっかり者の母さんの夫婦コンビ

1911年8月パリのルーブル美術館から「モナリザ」が盗難された。犯人はイタリア出身の塗装職人で、1913年の逮捕後裁判では「フランスに奪われたイタリアの宝を連れ戻した」と供述、禁固1年余りという軽い判決を受けた。今でもイタリアでは「奪還」とされ英雄扱いされている。

1994年2月にムンクの「叫び」が盗難されたのは私も知っていたが、1961年にゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれたのは知らなかった。『007 ドクター・ノオ』(1962)のネタにもされたくらいイギリスでは有名な事件のようだ。

本作はシュールで少し馬鹿げていて政治風刺が特徴であるブリティッシュコメディの秀作であり、65歳で亡くなったロジャー・ミッシェル監督の遺作である。

口先ばかり達者で社会性には欠けるきらいのあるタクシー運転手のケンプトン・バントン(ジム・ブロードベンド)。自分と同じ世代の人たちが社会から孤立して生活している姿を見て義憤に駆られた彼は、老人たちの唯一の楽しみであるテレビの受信料を無料にしろとの活動をしていた。

そんな時多額の税金を投入して「ウェリントン公爵」を購入したイギリス政府に対して、その絵を盗むという行為で異議を突きつけたという形になった。あくまでも結果論であるとは思うが。

この正義感は強いが困った父さんと家族を支えるしっかり者の母さんという夫婦コンビは、古今東西世界共通のあるあるなのだ。かくいう私も共感大であり、むしろ会話があるだけ羨ましい。

名画を盗んだことを自供し裁判にかけられるケンプトンだが、一世一代の大スピーチで傍聴者からはやんやの喝采。私は政府の政策に対する辛辣な批判は正しいと思うが、自身の窃盗に関する考え方は屁理屈にしか思えない。陪審員裁判だからこその判決だと思うが、日本人的感覚では得心がいかない。

しかしイギリス流正義を描いた娯楽映画と思えば問題なし。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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