アカデミー賞6部門受賞 トム・ハンクスの名演

空中を1本の羽がゆらゆらと漂っている。それがバス停に座るフォレスト(トム・ハンクス)の足元に落ちる。この映画の物語は主人公となるフォレストが、バスを待つ人々に話しかけながら、自らの波瀾万丈の過去を回想するかたちではじまる。

アメリカ・アラバマ州グリンボウ、暖ったかい母・ミセス・ガンプ(サリー・フィールド)に育てられたフォレストはすくすくと育ったが、知能指数は普通よりも少し劣っていた。足にはギプスが必要で、通学にはスクールバスを利用した。ちょっと近寄りがたい存在感を発するフォレストはいつも孤独だったが、ひとりジェニーだけは別で、ふたりはたちまち仲良しになった。

学校ではいじめにあっていたが、ある日、いじめっ子たちから逃げようとした時、不自由だった足が全速力を可能にするまでに回復していることに気づく。

ジェニーとの悲しい別れも経験するが、高校生になってもフォレストは相変わらずいじめの標的にされていた。逃げるフォレスト…そのまま、アメフトの試合中のグランドに進入する。その俊足をコーチに認められ、1963年、アラバマ大学に入学し、フットボールチームに迎入れられ活躍。全米の代表選手に選出され、ホワイトハウスに招かれ、ケネディ大統領と面会するまでになる。

『フォレスト・ガンプ 一期一会』は、フォレストが図らずも駆けぬけることになる数奇な人生を、アメリカの歴史とともに描いた映画である。

監督はロバート・ゼメキス。78年に『抱きしめたい』(日本公開82年)でデビュー。その後、3作目の『ロマンシング・ストーン 秘密の谷』(84年)のヒットを経て、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年)を大ヒット3部作に仕上げた。本作では第67回アカデミー賞で監督を受賞している。

その時々の米大統領、ベトナム戦争、卓球外交、ウォーターゲート事件などの歴史的な背景を彩るのは、プレスリー、ジョーン・バエズ、ボブ・ディラン、ドアーズ、サイモン&ガーファンクルの名曲。

出会いの素晴らしさを教えてくれる名作は、現在に響くメッセージを持ち色褪せることはない。美しき4Kニューマスター版をスクリーンでご堪能あれ。