岐阜新聞 映画部

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インディーズでも変わらない堤幸彦監督の上手さ

2022年03月30日

truth 〜姦しき弔いの果て〜

©2021 映画「truth 姦しき弔いの果て」パートナーズ

【出演】広山詞葉、福宮あやの、河野知美/佐藤二朗(忖度出演)
【監督・原案】堤幸彦

監督とキャストが同じ強度で映画を支えあう理想的な構造

堤幸彦監督といえば「トリック」や「20世紀少年」、「SPEC」で知られるメジャー監督だ。個人的には高校生の頃にDVDで観た「くちづけ」の衝撃が忘れられない。同級生の女の子に薦められ、翌日に教室で感想を伝えたことも懐かしい。近年だと「望み」も素晴らしかった。そんな堤幸彦監督の50本目にして最新作「truth ~姦しき弔いの果て~」は打って変わってインディーズ映画だ。キャストは女性3人、ワンシチュエーションの会話劇。さて、どんな映画になったのか…

まず結論から述べたい。これは面白かった。なおかつなかなか際どい。実は私、本作を2回観たのだが、1回目は素晴らしいとは思えなかった。というのも展開の際どさを完全に消化しきれなかったのだ。しかし、2回目は随所に散りばめられた監督のユーモアセンスと過剰なキャラクター描写、会話の面白さに引き込まれた。そして編集の巧みさにも驚いた。1度目でこの面白さに気づけなかったのは不覚であった。

本作での演出は完全なる正攻法。トリッキーなアングルやケレンでみせることは一切していないにも関わらず、ワンシチュエーションを70分間退させずに見せきる。その演出を支えている要因のひとつが編集だ。それぞれの表情を的確なタイミングでアップにすることで感情の動きを伝えている。しかもそれは話している相手に限らず、聞いている側の表情や声に出さないツッコミを口の動きとともに映すといった実にバラエティ豊かに組み立てられている。単独で映すのか、ほかの人も映り込ませるのかも含めて。反対に的確なタイミングでカメラを引いて彼女たちの動きをみせる。このメリハリの効いた映像演出が実に鮮やかだ。たとえアップからロングへと大胆に切り替わってもそれを感じさせないカッティングとリズム感。まぁ見事だ。

しかし、映像だけが凄いのかというとそうではない。むしろ、この正攻法の演出ができるのはキャスト3人の実力があってこそ。プロデューサーも兼務した彼女たちの迫力ある演技は凄かった。大げさながらも嘘くさくならない絶妙なバランスを保った演技によって本作は成り立っている。感情が乱高下し、アクションシーンもあるめまぐるしい展開の中で感情が持続し続ける素晴らしさがあった。

つまり本作は監督の演出とキャストの演技、両者が同じ強度で支えあうという理想的な構造をしているのだ。演技に演出、70分の中に見どころいっぱい。ただし、内容はかなり際どいのでそこだけご注意を。

語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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