岐阜新聞 映画部

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航空機のハイテク化による過信を描いたフレンチサスペンス

2022年03月28日

ブラックボックス:音声分析捜査

© 2020 / WY Productions - 24 25 FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA - PANACHE Productions

【出演】ピエール・ニネ ルー・ドゥ・ラージュ アンドレ・デュソリエ
【監督・脚本】ヤン・ゴズラン

前半の面白さは出色の出来。「お仕事映画」として最高

2014年3月、239人を乗せたまま行方不明となったマレーシア航空370便墜落事故。テロ、機体の故障、ハイジャック、機長による自殺行為など様々な説が囁かれているが未だ真相は不明だ。

2015年3月、150人を乗せたジャーマンウィングス9525便のフランス・アルプス墜落事故。原因は副操縦士が意図的に降下ボタンを作動させたとされているが、一部でハッカーによる仕業ではないかと指摘されている。

本作は、航空機のハイテク化による安全運航はあくまでも人間の性善説に成り立っており、故意または過失による作為や軽微な事故の隠蔽によっては、あっという間に崩壊してしまう様を描いたフレンチサスペンスである。

スポットがあたるのは、航空事故調査局の音声分析官というお仕事。地味で地道な専門職だが音声に関するエキスパートだ。

演ずるのは新進気鋭の若手俳優ピエール・ニネ。『イヴ・サンローラン』(14)に続き理知的な天才眼鏡男子の役をカッコよく極めている。惚れてしまいそうだ。

映画の前半はキャッチコピーにある「音だけで謎を解け!真実を聞き逃すな!!」の通り、リアルな専門用語が飛び交う中で、音声分析捜査官のマチュー(ピエール・ニネ)が高度な技術を駆使して原因を解明していく様を実に面白く描いていく。いわゆる「お仕事映画」ともいえ興味はつきない。

このままミステリーの安楽椅子探偵のように、「音声」だけを手掛かりに解決するのかと思いきや、後半は安ものの探偵映画になってしまった。せっかくのいいアイデアが、ツッコミどころ満載のご都合主義的展開になったのは残念でならない。

マチューの人生をあのよう結末で終えてしまうのも疑問だし、最終的なカタルシスも取ってつけたようで私には若干消化不良だ。

とはいうもののサスペンスとして上出来。特に前半の面白さは出色の出来であり、スピーディーな展開で最後まで飽きさせない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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