岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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壊れた過去を「金継ぎ」の如く修復し、次世代へ伝える

2022年03月10日

金の糸

©️ 3003 film production, 2019

【出演】ナナ・ジョルジャゼ、グランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ
【監督・脚本】ラナ・ゴゴベリゼ

ロシア軍のウクライナ侵攻のいま、観るべき映画

ロシア軍によるウクライナ侵攻という暴挙が世界中の非難を浴びているが、今から14年前の2008年、今と同じ北京五輪の開催中に"親ロシア地域の平和維持"という全く同じロジックで鎮圧された国がある。ジョージアである。

本作は、そのジョージアの女性監督ラナ・ゴゴベリゼが27年ぶりに91歳にして監督した2019年の映画だ。父をスターリンの粛清によって失い、母を10年間シベリアへ流刑された経験を持つ彼女の過酷な人生を投影した内容であり、壊れた過去を「金継ぎ」の如く修復してもいいという次世代への遺言のような作品である。

主人公は、弾圧され長い間出版することが出来なかった作家のエレナ(ナナ・ジョルジャゼ)と、プライドの高い元ソ連高官で娘の姑のミランダ(グランダ・ガブニア)、そしてエレナの古い恋人で今は車いす生活のアルチル(ズラ・キプシゼ)だ。

物語は、エレナの愛読書であるプルーストの「失われた時を求めて」をなぞるが如く、数十年前の記憶を蘇らせる。それはアルチルとの電話越しでのデートであり、ミランダとの隠しきれない確執である。それらを美しく含蓄のあるセリフで紡いでいく。意味を噛みしめるほど「許す」という感情がじわりじわりと浸透してくる。

映画は、官僚的で未だに過去に生きている認知症が始まったミランダをどう許していくかだが、彼女なりの落とし前の付け方には素直に感動し感情を揺さぶられた。

ゴゴベリゼ作品は初めて観たが、舞台設定と撮影ポジションは独特だ。

エレナが住んでいるアパートは中庭を取り囲んだ集合住宅で、彼女の自宅からはヒッチコックの『裏窓』のように、住民たちの日常生活が覗き見できる。カメラは喋っている人物を正面から捉えることなく、その人の横顔か観ているであろう他人の生活を映し出す。過去の情景を俯瞰し客観視しているようだ。

ジョージアに再びの悲劇が起こらないことを祈っている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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