岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ふたりの少女の危うい青春映画

2022年03月07日

麻希のいる世界

© SHIMAFILMS

【出演】新谷ゆづみ、日髙麻鈴、窪塚愛流、鎌田らい樹、八木優希、大橋律、松浦祐也、青山倫子、井浦新
【監督・脚本】塩田明彦

噛み合わない苛立ちに包まれて輝かない音楽

野原にぽっんと建つ殺風景な倉庫を何か曰くありげに見ながら、ひとりの少女が危うげな足取りで歩いている。と、建物から男が出てくる。続いて少女がひとり。ふたりの少女は顔見知りなのか?意味ありげに視線が交わされたように思える。

高校2年の由希(新谷ゆづみ)と麻希(日高麻鈴)は同級生なのだが、特別親しい間柄には見えない。自転車通学の麻希を由希は追う。

麻希が自転車を停めたのはひなびた金物屋で、そこが麻希のバイト先であることを知る。由希は履歴書を書き、その金物屋に面接に行く。しかし、麻希は店を辞めている。新たな麻希のバイト先はボウリング場。由希は再び履歴書を書く。それはまるでストーカーのように見える。

『麻希のいる世界』は、この不思議な関係性にあるふたりの少女の物語なのだが、オープニングの語り口のぎこちなさが、そのままふたりの少女の危うげな揺らぎのような気持ちと同化する。

由希の苛立ちは、病によって将来に希望が持てないことが原因なのか? 離婚した親との確執なのか? 母親が同級生の裕介(窪塚愛流)の父親で、主治医でもある伊波(井浦新)と再婚をしようとしていることへの反発なのか?

いくつかの関係性が浮かび上がることで浮上する疑問の積み重ね。

さらに、麻希との関係もよくわからないまま進行する。由希は麻希の才能に惹かれていることは次第に明らかになり、高校の軽音部にバンド活動の場を求めるようとするのだが、この展開も後出しジャンケン気味に、裕介との過去話が明らかにされる。

三角関係のようでいて歪な関係性は、少女の一途な気持ちが作り出すパッションの発露だと…。

映画は終盤、突発する事件によって一変する。

塩田明彦監督によるオリジナル脚本は、当てがきに近い形で書かれたものだという。そして物語の重要な鍵であるのが麻希が創り出す音楽世界なのだが…。

塩田作品にある音楽との融合は、本作では上手くいっているとは言い難く。交錯し輝くという化学反応はなく、すれ違う少女たちの感情と同じく、中途半端なまま、物語の破綻ばかりが際立つのが残念だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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