岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

豪華絢爛で観光的要素もふんだんな堂々たるミステリー

2022年02月28日

ナイル殺人事件

© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

【出演】 ケネス・ブラナー、ガル・ガドット、アーミー・ハマー、アネット・べニング
【監督】ケネス・ブラナー

第一次大戦での栄誉と悔恨がトラウマに

アガサ・クリスティの著作は、ミステリー史上のベストワンと名高い「そして誰もいなくなった」を始めいくつか読んでいる。その中で「ナイルに死す」(1937刊)の私の印象は、傑作には違いないが、登場人物が大変多く事件が起きる迄の描写がずいぶん長いという読後感だった。

初めての映画化は1978年。私が大学2年の時に観たが正直印象は薄い、というかほとんど覚えてない。よって2度めの映画化の本作は、ほぼ初めて観たのと同じだ。

シェイクスピア俳優ケネス・ブラナーが監督・主演した本作は、人間の愛憎ドラマを前面に押し出した、愛に関するミステリー仕立ての映画であった。

彼が演ずるエルキュール・ポワロは重厚かつエレガント。第一次大戦での栄誉と悔恨がトラウマになっている設定は初めてみた。また改めて思うのは、ポワロはシャーロック・ホームズのように事件を未然に防ぐのではなく、金田一耕助と同じく起こった殺人を解説するだけ。これは原作通りといえるのだが名探偵であるかどうかは疑問だ。

映画全体は豪華絢爛で観光的要素もふんだん。出演する役者陣は皆一様に芸達者で観ていて飽きるところは一切ない。

若干のCGっぽさはご愛敬として見過ごせるが、真面目なブラナーさんにケチを付けたいのは、ナイル川に至るまでの描写が原作通りやたら長いのだ。2時間7分の上映時間のうち体感的には半分くらい。そして痺れを切らす頃ようやく事件が始まる。

その途端、観客に考える暇も無く物語は動き出し怒涛の展開を見せていく。真犯人に疑われた乗客たちはポワロの圧迫尋問に耐えていくのだが、その後の解決編は説明的シーンの連続、息せき切って物語は進んでいってしまう。原作のバランスがそうだとしても、映画的にはミステリーシーンをもっと早くスタートさせ、時間をかけて謎解きシーンを描くべきと思う。

しかしながら堂々たるミステリーであることには間違いない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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