岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

聴覚障害者の役は聴覚障害者の俳優が演ずる、あたり前の映画

2022年02月24日

コーダ あいのうた

© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS 

【出演】 エミリア・ジョーンズ、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、マーリー・マトリン
【監督・脚本】シアン・ヘダー

家族をとって音楽を諦めるのか、自分のために進んでいくのか

数年前のことだがJR金山駅のホームで、名古屋聾(ろう)学校の生徒たちが手話のやり取りのみで大爆笑しているところに遭遇した。内容は全くわからなかったが、釣られて私も笑顔になった。誤解を恐れずに言えば、チャップリンのサイレント映画のようだった。

本作を観ていたら、その時の光景を思い出した。とにかくみんな明るいのである。

主人公は、家族の中で唯一耳が聞こえる歌が上手なルビー(エミリア・ジョーンズ)。彼女は陽気で下ネタ大好きの父フランク(トロイ・コッツァー)、家族想いの肝っ玉母さんジャッキー(マーリー・マトリン)、イケメンでプレーボーイの兄レオ(ダニエル・デュラント)との4人家族だ。

家業は漁師。身振り手振りで楽し気な夕餉の団らんなど、少なくともほぼサイレントの我が家よりもずっと賑やかだ。羨ましい。

映画を観た後に知ったことだが、エミリア・ジョーンズ以外の家族役の俳優は、みんな聴覚障害者だということ。どうりでわざとらしさが全く無く自然の可笑しみが出ていたんだ。素晴らしい!

このロッシ家、ルビーが通訳となって家族と健常者の間を取り持っている。そして彼女が漁船に乗り込まなければ、無線や警笛への対応ができず操業できない(なお現在はIT化されていれば大丈夫)。

家族は、ルビーが名門のバークリー音楽学校に入れるだけの才能の持ち主で、頭の中では「歌が上手い」ことはわかってあげても、「歌」という行為が理解できない。さあこのジレンマをどう乗り越えるのかというのがこの映画である。

全体は湿っぽさも卑屈さも一切なく、陽気な家族を中心としたコメディ仕立て。父フランクの手話による下ネタには何度も大爆笑した。

ルビーが家族をとって音楽を諦めるのか、自分のために進んでいくのか。

ラスト、ルビーが入試選抜で、家族を前に「青春の光と影」を歌うシーンの仕掛けは、うれし涙でたまらなかった。感無量!

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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