岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

アンダーソンワールド全開、観てて楽しいてんこ盛りの映画

2022年02月17日

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

【出演】ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥ、フランシス・マクドーマンド、ティモシー・シャラメ、リナ・クードリ、ジェフリー・ライト、マチュー・アマルリック、スティーブ・パーク、ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、クリストフ・ヴァルツ、エドワード・ノートン、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン ほか
【監督・脚本】ウェス・アンダーソン

随所に映画オタクぶりを発揮、中毒になりそう

一度観ただけではよくわからない映画がある。「自分には向いてない」と諦めるか、「監督の独り善がり」と決めつけるか、「もう1回観てみようと」とチャレンジするか、結局単なる駄作か。

息つく暇もないカット割りと、字幕では拾いきれないほどのセリフ量、細部にまでこだわったファッションや小物類など「一度の鑑賞ではすべてを網羅できない」情報量を持つのが、ウェス・アンダーソン監督の映画である。

第10作目の長編である本作は、彼の世界観が一段ときわだってきており、私も2回観てようやく半分くらい分かったような気がしてきた。彼は「誰にもわかるような映画作り」などこれっぽちも考えておらず、随所に映画オタクぶりが発揮され、私なんか中毒になりそうだ。

映画は、フランスで発行される「フレンチ・ディスパッチ」誌の最終刊にして編集長追悼号のための、1つの街レポと3つの特集記事に分かれた雑誌みたいな構成になっている。色彩はカラーとモノクロが混在、判型はスタンダードサイズとワイドサイズが使い分けられ、最後はアニメーションまで登場。ごった煮感は、興味をひくものは何でも扱ってきた総合誌の趣である。

映画の中で取り上げられた記事は、知識層向けの高級なものでなく、どちらかというと興味本位なイエローペーパー的なもの。現在の雑誌を皮肉っているようで面白い。

内容も、①現代美術の価値を決めている不可解さへの辛辣な風刺、②五月革命への暖かさみなぎるオマージュ、③フランス食文化に対する憧憬と皮肉など、現代社会に対するアンダーソンなりの思いで貫かれている。

もちろんシンメトリー(左右対称)でスタイリッシュな画面構成、パステルカラーで統一された色彩、間抜けで風変わりだけど愛くるしい登場人物など、いつも通りのアンダーソンワールドだ。

フランス映画に対するオマージュも至る所に散見されて、観てて楽しいてんこ盛りの映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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