岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ドキュメンタリーと見まがう迫真の緊張感

2018年02月10日

デトロイト

©2017 SHEPARD DOG, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、アンソニー・マッキー
【監督・製作】キャスリン・ビグロー

人種差別が再燃するトランプ政権下の課題

 1967年、史上最大の人種暴動と呼ばれるミシガン州デトロイトの暴動を題材とする。市内のモーテルの一室でたまたま居合わせた白人少女二人と黒人のバンド仲間が市警察の激しい尋問に遭遇する。実際の事件を元にしている。半世紀前の当事者の多くはすでに亡くなっている。それでも監督のキャスリン・ビグローと共同脚本のマーク・ボールは、残された資料を基に克明に再現しようとした。
 細かいカットの積み重ね、クロースアップの多用、手持ちカメラによる臨場感など、近年のアメリカ映画の粋を見ることができる。撮影はケン・ローチ作品が多いバリー・アクロイドだが、ビグロー監督にも重用され、本作が2本目。この映画で市警の若い警官たちは常軌を逸した行為に及ぶが、上層部や州警察は常識をわきまえているように描かれる。そこに僅かな救いを見出すこともできようが、一方で闇の深さも際立たせる。
 2016年にアメリカで最も熱狂的に読まれたという「地下鉄道」(コルソン・ホワイトヘッド著)は最近邦訳が出て早速読んだ。19世紀前半の奴隷制の中での少女の逃亡の物語である。実際に逃亡する手段として地下鉄道があったらというフィクションだが、黒人問題への意識が高まっているのだろう。
 まさにトランプ政権下、人種問題が再燃している。また、この事件から長い年月が経った今日においても白人の警官による黒人の射殺事件は続いている。監督をはじめ、製作者たちの言いたいことは明白だ。当時の状況と比べ、今はどうなのかと。

『デトロイト』はTOHOシネマズ岐阜、TOHOシネマズ モレラ岐阜ほか、全国ロードショー。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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