岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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孤独死したひとりの女性は、蒸発した加賀恭一郎の母だった!

2018年02月12日

祈りの幕が下りる時

©2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

【出演】阿部寛、松嶋菜々子、溝端淳平、田中麗奈、伊藤蘭、小日向文世、山﨑努
【監督】福澤克雄

複雑な糸を解きほぐした先に見える親子の哀しく切ない過去

 映画の冒頭、孤独死したひとりの女性の過去が語られる。仙台の盛場のスナックバーにふらりと現れた若いとは言えない女。雇い入れを懇願する様子にワケありの流れ者の哀しみがよぎる。誠実な働き者だった女には唯一、ひとりの男の存在があったが、何故かそれも立ち消えてしまう。もうひとつの糸口は実子の存在。過去を語ろうとしなかった女が、一度だけ口を滑らせた子どもの影。それが消えた男が残した標(住所)によって明らかになる。ここに登場するのが加賀恭一郎。その女性が謎の失踪を遂げた加賀の母親であることが分かる。ここまでは過去の話で、物語は一気に現在に突入する。
 「新参者」シリーズ(TBS)がドラマ化されたのは2010年で、阿部寛演じる刑事・加賀恭一郎は当たり役となり、その後もスペシャルドラマ化が続く人気シリーズとなった。加賀はその容姿からしてかなり強烈。個性的な刑事につきものである単独行動が目立つが、事件を見通す観察眼は鋭い。そして加賀を愛すべきキャラクターにしているのは、犯罪者に対する優しさや思いやりを失わないことだろうか。2012年には『麒麟の翼 劇場版・新参者』でついに映画化された。
 『祈りの幕が下りる時』では、物語の重要な舞台となる明治座をはじめ、シリーズの見せ場のひとつである日本橋・人形町の魅力もふんだんに盛り込まれている。日本橋を中心とした謎のキーワード“橋”の見せ方も華麗。複雑な伏線をつなぎ合わせては解きを繰り返し、真実に近づこうとする緩みない展開も見事。秘密のベールの先に見えた真実の物語は、名作『砂の器』の“父子もの”を彷彿させ感動的だが、謎解きの過去語りの細部にほころびが見えるのは少し残念。
 監督は『私は貝になりたい』(08)以来、久々の第2作となる福澤克雄。冒頭の馴染みのテーマ音楽が流れるあたりから、セリフに音楽を被せる過剰な音演出が気になった。ところが、クライマックス…音の演出で効果的な瞬間がおとずれる。はたしてこれは意図的なものだったか?

『祈りの幕が下りる時』は岐阜CINEXほか、全国東宝系にてロードショー。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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