岐阜新聞 映画部

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デビュー直前に消えたヴァイオリニストの謎

2022年01月26日

天才ヴァイオリニストと消えた旋律

© 2019 SPF (Songs) Productions Inc., LF (Songs) Productions Inc., and Proton Cinema Kft

【出演】ティム・ロス、クライヴ・オーウェン、ルーク・ドイル、ミシャ・ハンドリー、キャサリン・マコーマック
【監督】フランソワ・ジラール

名曲の数々をレイ・チェンの名演奏で聴く幸せ

1938年のロンドンに暮らす9歳のマーティンの家に、ポーランド系のユダヤ人ドヴィドルがやって来る。華奢で大人しそうに見える少年は、いざヴァイオリンを手にすると見事なテクニックで、素晴らしい演奏を披露した。

次第に激しくなる第二次世界大戦の不穏な空気の中、同い年のマーティンとヴィドルはすぐに打ち解け、兄弟のような関係になる。

そして、ふたりが21歳に成長した時、ヴィドルはヴァイオリンのデビューコンサートの日を迎える。

父親が周到に準備した会場でリハーサルの準備を終え、あとは開幕を待つばかり。しかし、ヴィドルがステージに立つことはなく、マーティンと家族の前から完全に姿を消してしまう。

それから、35年の月日は流れ…父親は中止になったコンサートの後始末のため全財産を失い失意のうちに亡くなった。マーティン(ティム・ロス)にもその影響は少なからず及んだが、音楽から離れることはなく、今は、ピアノ教師をしている。

ある日、とあるコンクールの審査員をしていたマーティンは、若きヴァイオリニストの演奏に、遠い記憶にある "音の痕跡" を発見し確信する。

『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』は、デビュー直前にの失踪したヴァイオリニストの謎を追うミステリーの展開だが、物語の根底に見えるのは、ナチスによるユダヤ人迫害の歴史である。

監督のフランソワ・ジラールは、『レッド・バイオリン』(1998年/日本公開99年)では、名器と呼ばれたヴァイオリンにまつわる数奇な運命を描き、前作『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』(2015年/日本公開16年)でも、唯一無二の声を持つ少年を主人公に、音楽を材にした映画を数多く手がけている。

本作にもバッハ、ベートーヴェン、パガニーニといった数々のクラシックの名曲が流れる。ちょっとした練習シーンや防空壕でのセッションなど、見事なシーンに仕上げるセンスの良さを見せている。

ユダヤ人迫害の啓発の語り口は、哀しくとも美しく感動的だが、いくつかの謎解きの後に浮かび上がる真相の中に、許容できない理解し難いことが混じるのは何とも虚しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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