岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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脱北者女性の波瀾万丈の闘いを描く力作

2022年01月25日

ファイター、北からの挑戦者

©2020 Haegrimm Pictures All Rights Reserved

【出演】イム・ソンミ、オ・グァンロク、ペク・ソビン
【監督】ユン・ジェホ

国境は偏見と差別を生み新しい土地の希望は儚い

脱北者、あるいは脱北民は、朝鮮民主主義人民共和国=北朝鮮から国外脱出した北朝鮮国籍者のことを言う。北朝鮮では処刑の対象となり、隣国中国では不法滞在者として扱われる。大韓民国(韓国)による法律上の用語では、北韓離脱住民である。一時期、"セト民" という呼び名が正式名として使用されたが、これは定着しなかった。セト民には「新しい土地で人生の希望を抱いて生きる人」という意味がある。

ソウル、脱北者であるリ・ジナ(イム・ソンミ)が、役所の職員の男に付き添われアパートに辿り着く。親切な対応も疎ましく、彼女は、ただ疲れていた。

脱北者には受け入れる韓国政府の手厚い支援制度があり、新たな生活に順応するための、基礎的な適応訓練が3ヶ月間行われる。そして安価な公共賃貸住宅の提供を受ける。

リ・ジナは定着支援研修を終えた直後である。

脱北者には運転免許や資格取得の支援や就学就労の支援もあるのだが、北で得た資格や技術や学位は、韓国では通用しない。そのため、単純低賃金な労働に就く場合がほとんどである。

リ・ジナも近所の食堂で働き始める。慣れない仕事や言葉使いに疲れ果てて部屋に帰る毎日。生活を切り詰めても安い賃金では将来の希望すら見えてこない。リ・ジナは助けを求める父のため、脱北ブローカーに新しい仕事を紹介してもらう。

脱北ブローカーは、1997年頃から急増した中国への越境者に対して発生した、亡命のための中立人のことで、中国国内での取締りの強化によって、その組織は複雑化した。

『ファイター、北からの挑戦者』の監督ユン・ジェホは、ドキュメンタリー作家としてそのキャリアをスタートさせている。本作は長編劇映画の第2作目だが、2016年に発表した『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』は、東南アジアルートでの逃避行を生々しく描いたドキュメンタリーである。

リ・ジナが新しく得た仕事はボクシングジムの雑用係だった。北の軍隊でのボクシング体験は、彼女の闘争本能に火をつけていく。それは脱北者に対する偏見と差別への闘いでもあった。過酷な運命を静かに見つめ、事実を提示する力強い映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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