岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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エスプリのバトルで描く、上質のフレンチコメディ

2022年01月17日

ローラとふたりの兄

© 2018 NOLITA CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - FRANCE 2 CINEMA

【出演】リュディヴィーヌ・サニエ、ジョゼ・ガルシア、ジャン=ポール・ルーヴ、ラムジー・べディア、ポーリーヌ・クレマン
【監督】ジャン=ポール・ルーヴ

何度か出てくる"日本いじり"には、思わず微苦笑

本作は、口うるさいフランス人が世間や家庭で日夜繰り広げる「エスプリのバトル」を軸にして、「喧嘩するほど仲がいい」家族関係を描いたハートウォーミングコメディーだ。

長男で恋多きマイペース男・眼鏡士のブノワ(ジャン=ポール・ルーブ)、二男の真面目で融通の利かないビル解体業者ピエール(ジョゼ・ガルシア)、二人の困った兄を健気に支える妹で弁護士のローラ(リュディヴィーヌ・サニエ)。お互いに嫌味を言い合い家族の形も三者三葉、フランス人らしく協調性よりも独創性を基準に行動するが、決定的な事態には陥らず絶妙な距離感で付き合っていく。

ここらあたりの人間関係の描き方は、ちょっとした「渡る世間は鬼ばかり」である。事故の責任を押し付けられて失業してしまい、それを家族にも兄弟にも言えないなんて、アメリカ映画ではまず考えられない。フランス人て案外日本人的なところもあるのかなと親近感がわいてくる。

浮世絵を芸術作品として認めたのはフランスの印象派の画家たちだし、柔道人口はなんと日本の3倍だ。本作を見ていても、何度か"日本いじり"が出てきて思わず微笑んでしまう。

「苦境に陥って蒸発するのは日本人に多い」

「日本では古い建築物を壊さずに、豆腐で家の壁を治す」

「ピエールは寿司が好きだ」

コロナが落ち着いたら、是非三兄弟で日本に来てもらいたいものだ。

そもそもこの映画の発端は、長男ブノワの3度目!の結婚式に、二男のピエールが遅れて来たことから始まる。とやかく言うつもりはないが、3度目の結婚式を臆面もなく盛大にやるとは、さすが愛の国の国民である。堂々たる姿だ。

長男役のジャン=ポール・ルーブが監督したこの作品は、日本が"一億総中流"と言われた時代に一世を風靡した「渡鬼」と同じく、プチ・ブル(中産階級)の生活を描いている。

もう一度あの頃に戻りたいと思わせた上質のフレンチコメディである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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