岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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アナログな手紙から生まれるラブストーリー

2022年01月11日

雨とあなたの物語

© 2021 KIDARI ENT, INC., SONY PICTURES ENTERTAINMENT KOREA INC. (BRANCH), AZIT FILM CORP., AZIT PICTURES CORP. ALL RIGHTS RESERVED

【出演】カン・ハヌル、チョン・ウヒ/カン・ソラ
【監督】チョ・ジンモ

転校生、手紙、大晦日、雨、条件は揃った!

携帯電話の変革期は世紀を跨いだ頃とされる。80年代に始まった携帯電話の普及は、携帯できないショルダーフォンから90年代にはスリム化小型化が進んだ。とは言え、90年代に主流であったのは、今や若い世代には化石である ”ポケベル" だった。文字、あるいは数字を暗号化した通信手段が先端であった時代があった。

90年代後半、小型化、レンタルというハード、ソフト両面の変革は、携帯電話の普及を加速させた。

2003年を舞台とする『雨とあなたの物語』は、電話でもなくポケベルでもなく、携帯電話電話でもない手紙によって紡ぎだされる物語である。

ソウルに住むヨンホ(カン・ハヌル)は予備校生。未だ人生に確たる目標があるわけでもなく、張り合いのない日常を過ごしていた。

ある日、記憶の片隅に隠れていた友人のことを思い出し、手紙を出すことになる。

釜山に住むソヒ(チョン・ウヒ)は、母親とふたりで小さな古書店を営み、病気の姉ソヨンの世話もこなしている。しかし、彼女もまた、将来に明確な夢があるわけでもなく、その日常は平坦なものだった。

と、そこに、姉ソヨン宛に手紙が届く。それはヨンホが書いた手紙だった。

ソヒは姉に代わりヨンホに返事の手紙を書く。ぎこちなくともはじまるふたりの文通だったが、ソヒはそこに条件を科す…「質問しないこと」「会いたいと言わないこと」「会いに来ないこと」…いつしかそのやりとりは、手紙を待ちわびる感情へと昇華していく。

手紙からはじまる、あるいは手紙が何らかの重要な鍵となるラブストーリーは過去にもいくつかある。我々の世代には、文通は懐かしく、忘れかけていた思いをくすぐる。スピーディーでも、便利とも言えないアナログな手段は、だからこそそこに不思議な感情の化学反応を発生させる。

そしてヨンホはダメもとで会う提案をする。そこには12月31日の日時限定だけでなく、”雨が降ったら"という条件も付け加えた。

深みを欠くという苦言が野暮に聞こえるほどに、心温まる美しい物語である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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