岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

陰謀論が土台の、アナクロニズムスパイアクション映画

2022年01月05日

キングスマン:ファースト・エージェント

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

【出演】レイフ・ファインズ、ハリス・ディキンソン
【監督】マシュー・ヴォーン

イギリスが正義の、荒唐無稽な活劇

"荒唐無稽"という四字熟語がある。新明解では「勝手気ままな思い付き」となっている。

私にとって「奇想天外(発想が凡人には及びもつかないほど奇抜)で荒唐無稽な映画」というのは、ときに誉め言葉でもあるのだが、本作に関しては独り善がりで思い上がりの激しい、笑えない単なる"荒唐無稽な活劇"であった。

『キングスマン』シリーズを見たのは『ファースト・エージェント』が初めてだが、まずディテールが杜撰すぎる。

例えば怪僧ラスプーチンや女スパイのマタ・ハリ、秘密結社の頭領らと対決するアクションシーンは、相当の工夫がされ目を見張るところがあるのは確かだが、「手抜きかよっ!」て見えるような適当なシーンがときおり挟まれる。「これを面白がれ」っていうのであれば、「ハイわかりました」とはなるが「私にはついていけません」なのだ。

次に納得できないのは、今作の主人公オックスフォード公(レイフ・ファインズ)と息子コンラッド(ハリス・ディキンソン)との関係だ。キングスマンを作る発端となる、説得力のあるシチュエーションを期待したが、コンラッドをああも簡単に殺してしまう。平和主義者だったオックスフォード公が、その反対になるのには「充分な理由だ」ってことで片付けてしまう。肝心な説明が疎かだ。

最後に敵役のラスボスが思わせぶりたっぷりに「首謀者は私でございッ!」て振り向くところ。「あんた誰だっけ?」である。オチが決まらない。

で私が一番気に入らないのは、陰謀論が土台となっているところだ。第一次世界大戦は、すべて秘密結社が操っていた!が物語の骨子だが、どうみても「イギリスって凄いでしょ。正義でしょ」としかみえない。ドイツもロシアもアメリカもコケにしてい笑い飛ばす。「だってイギリスは被害者だもん」て話。ふざけるな!と言いたい。

アナクロニズムのスパイアクションだが、娯楽映画としてはまあ面白かった。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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