岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品老後の資金がありません! B! どんな試練も笑いに変えて、逞しく生きていくライト・コメディ 2022年01月03日 老後の資金がありません! ⓒ2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会 【出演】天海祐希、松重豊/新川優愛、瀬戸利樹、加藤諒、柴田理恵、石井正則、若村麻由美、友近、クリス松村、高橋メアリージュン、佐々木健介、北斗晶 、荻原博子(経済ジャーナリスト)、竜雷太、藤田弓子、哀川翔、毒蝮三太夫、三谷幸喜、草笛光子 【監督】前田哲 江戸っ子で宝塚歌劇団、ハマっ子で松竹歌劇団の豪華共演 テーマや物語に重きを置かず、日常での"あるある"的な共感や、時事風刺などを取り入れた娯楽性の高い演劇を、「ライト・コメディ(軽演劇)」という。 本作を観ていると、名古屋三座と言われた、御園座や中日劇場、中でも名鉄ホールで公演された商業演劇を彷彿とさせる。あとから知ったことではあるが、「喜劇 老後の資金がありません」という演目で、新橋演舞場や大阪松竹座で、映画に先駆け舞台化されていたのだ。 まずは、共感しつつも他人事である設定。日頃の憂さを晴らそうと、「ああ面白かった、また明日から頑張ろう!」と元気を貰いに来たのに、身につまされ暗い気持ちで帰らされたら「見るんじゃなかった。金返せ」となるに違いない。 歌って踊る生前葬とか、区役所の年金調査員への詐欺行為とか、最後に夫婦そろってシェアハウスに入居するとか、あまりにも能天気だなどと批判しても意味はない。そんなことが有り得ないのは、人生経験を重ねてあとは細々と年金暮らしをするだけのシニア(当然わたしも含まれる)には、言われなくてもわかっている。 映画の中の他人の不幸を笑いつつ、「こうなったら幸せだよな」とチョッピリ思えばいいのであって、現実に即したリアリティなど求めてないのだ。中高年の悲哀を笑いに変える、綾小路きみまろの毒舌漫談を聞いて、お腹を抱えるほど笑うのと同じなのだ。 物語は、予定外の出費がかさみ、さらに予定外の失業で人生ままならない節約大好きな篤子(天海祐希)と、浪費壁はあるが人生最後まで楽しもうという芳乃(草笛光子)が中心となってくる。 この二人、片や宝塚歌劇団、片や松竹歌劇団のトップスターだった人。そして片や江戸っ子、方やハマっ子。歯切れのいいセリフ回しとキップのいい演技で、どんな試練も笑いに変えて逞しく生き抜いていく姿を演じ、見ていて明るく勇気をもらえる。 ライトな娯楽作として、上出来の映画である。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2023年09月26日 / 君は行く先を知らない 暢気なユーモアが緊張に変わるロードムービー 2023年09月26日 / 君は行く先を知らない シリアスな内容を、ユーモアと詩情で包んだ瑞々しい映画 2023年09月25日 / ふたりのマエストロ 指揮者親子のハートフルコメディ more 2021年01月19日 / 下高井戸シネマ(東京都) 住宅街の中…マンションの2階にある映画館 2021年12月08日 / 【思い出の映画館】新宿プラザ劇場(東京都) 歌舞伎町で骨太な大作映画を観るならココ 2022年01月12日 / 静岡シネ・ギャラリー(静岡県) 静岡駅の近く…由緒あるお寺が運営する映画館 more
江戸っ子で宝塚歌劇団、ハマっ子で松竹歌劇団の豪華共演
テーマや物語に重きを置かず、日常での"あるある"的な共感や、時事風刺などを取り入れた娯楽性の高い演劇を、「ライト・コメディ(軽演劇)」という。
本作を観ていると、名古屋三座と言われた、御園座や中日劇場、中でも名鉄ホールで公演された商業演劇を彷彿とさせる。あとから知ったことではあるが、「喜劇 老後の資金がありません」という演目で、新橋演舞場や大阪松竹座で、映画に先駆け舞台化されていたのだ。
まずは、共感しつつも他人事である設定。日頃の憂さを晴らそうと、「ああ面白かった、また明日から頑張ろう!」と元気を貰いに来たのに、身につまされ暗い気持ちで帰らされたら「見るんじゃなかった。金返せ」となるに違いない。
歌って踊る生前葬とか、区役所の年金調査員への詐欺行為とか、最後に夫婦そろってシェアハウスに入居するとか、あまりにも能天気だなどと批判しても意味はない。そんなことが有り得ないのは、人生経験を重ねてあとは細々と年金暮らしをするだけのシニア(当然わたしも含まれる)には、言われなくてもわかっている。
映画の中の他人の不幸を笑いつつ、「こうなったら幸せだよな」とチョッピリ思えばいいのであって、現実に即したリアリティなど求めてないのだ。中高年の悲哀を笑いに変える、綾小路きみまろの毒舌漫談を聞いて、お腹を抱えるほど笑うのと同じなのだ。
物語は、予定外の出費がかさみ、さらに予定外の失業で人生ままならない節約大好きな篤子(天海祐希)と、浪費壁はあるが人生最後まで楽しもうという芳乃(草笛光子)が中心となってくる。
この二人、片や宝塚歌劇団、片や松竹歌劇団のトップスターだった人。そして片や江戸っ子、方やハマっ子。歯切れのいいセリフ回しとキップのいい演技で、どんな試練も笑いに変えて逞しく生き抜いていく姿を演じ、見ていて明るく勇気をもらえる。
ライトな娯楽作として、上出来の映画である。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。