岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

独創性に富んだストーリー、考え抜かれたカメラワーク、達者な演技

2021年12月28日

先生、私の隣に座っていただけませんか?

©2021「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会

【出演】黒木華、柄本佑/金子大地、奈緒/風吹ジュン
【監督・脚本】堀江貴大

一スジ(脚本)・ニヌケ(映像)・三ドウサ(演技)

日本映画の父と言われる黎明期の大監督・牧野省三に「一スジ(脚本)、ニヌケ(映像)、三ドウサ(演技)」という言葉がある。いまに置き換えれば、まずは優れたシナリオがあって、次に巧みな撮影、そして俳優の演技力ということになる。

本作は、2018年にTSUTAYA主催のオリジナル作品企画コンテストで、準グランプリに輝いた堀江貴大の企画を、自身が監督した作品だ。着眼点が素晴らしく、ストーリーも独創性に富んでおり、男の情けなさで笑わされ、着地点も程よく余韻を残している。さすが審査員をうならせただけのシナリオではある。

物語は、元売れっ子漫画家で今は妻・佐和子(黒木華)のアシスタントに甘んじている俊夫(柄本佑)の視点で進んでいく。そのため俊夫が出てこないシーンではカメラは第三者視点となっており、観客も傍観者の一人として佐和子の行動を色々勘ぐりながら見ていくことになる。よく考え抜かれたカメラワークだ。

そして演技賞常連の黒木華と柄本佑が、ややもすれば説明的な演技になりかねない役どころを、我が意を得たりとばかりに軽々と演じていく。佐和子の母役の風吹ジュンのあったかく包み込む感じや、俊夫の不倫相手役の奈緒のあっけらかんとした様子も適材適所であり、自動車学校教官役の金子大地の爽やかさは、俊夫の嫉妬を呼ぶに相応しいカッコ良さだ。

ようするにこの映画は、牧野が唱えた一スジニヌケ三ドウサの三大原則を踏襲しており、これに堀江監督の演出力や統率力が加わることによって、優れた娯楽映画が誕生したのだ。

漫画と現実がシンクロするというアイデアは、今年6月に公開された『キャラクター』との類似性もあるが、ホラータッチとコメディタッチの違いもあり、両方ともオリジナリティあふれる考え抜かれたストーリーで、私は2作品共とても面白く観た。

堀江監督には、娯楽映画の名手マキノ雅弘のような監督を期待したいものだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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