岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

奇跡の絵画は、鑑賞目的か?投機目的か?

2021年12月27日

ダ・ヴィンチは誰に微笑む

©2021 Zadig Productions © Zadig Productions - FTV

【監督】アントワーヌ・ヴィトキーヌ

13万円が510億円に!うごめく魑魅魍魎たち

古今東西を問わず世界で一番有名な画家は、レオナルド・ダ・ヴィンチであろう。「モナリザ」や「最後の晩餐」は教科書でもお馴染みだ。

しかしダ・ヴィンチの直筆絵画は、世界中合わせても十数点しかないらしい。数がはっきりしないのは、その真贋について専門家でも意見がわかれているからだ。

本作は、2017年11月15日に行われたオークションで、ダ・ヴィンチ最後の作品とされる「サルバトール・ムンディ(世界の救世主)」が、史上最高額の約510億円で落札されるところからはじまる。

こんなべらぼうな金額を出せるのは、IT長者か石油王しかないはずで、個人所有になってしまうのは悲しくてしかたがない。最後に誰が落札したかは明かされるが、公共の財産として普通に鑑賞できるのかは全く不明瞭である。

2005年、ニューヨークの美術商が、「もしかしたらダ・ヴィンチの失われた絵かもしれない」という直感により、約13万円で落札する。ここがスタートだ。

破れがあり重ね塗りもされて状態の悪かったこの絵画が、12年後に約510億円に化けるまでに関わった魑魅魍魎たちが次々と登場し、証言を重ねていく。

修復を終えた絵画を見た専門家たちの見解は真っ二つに分かれる。ダ・ヴィンチの真筆か弟子が描いたものか?

そんなことはお構いなしに美術商達は当然のように商売をする。ロシアの新興財閥に頼まれた美術商は、個人取引で約106億円で落札したものを約170億円で転売する。

もうこうなってくると、ダ・ヴィンチの最後の作品の価値なんてどうでもよい。本物か偽物かなども関係なく、客を信用させて買わせる。ただただ投機目的だけになってくるのだ。

絵画って、多くの人に見てもらい、それぞれのココロに訴えかけ影響を与えるのが目的だと思うが、金儲けだけになっている。この映画を観ていると、そんなところがあぶり出されてくるのだ。嗚呼、嘆かわしい!

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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