岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

梅の木に見守られた母と息子の物語

2021年12月13日

梅切らぬバカ

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

【出演】加賀まりこ、塚地武雅、渡辺いっけい、森口瑤子、斎藤汰鷹、徳井優、広岡由里子、北山雅康、真魚、木下あかり、鶴田忍、永嶋柊吾、大地泰仁、渡辺穣、三浦景虎、吉田久美、辻本みず希、林家正蔵、高島礼子
【監督・脚本】和島香太郎

ささやかな日常からのささやかな問いかけ

山田珠子(加賀まりこ)は、住宅街にある古民家で占い業を営み暮らしている。その日、誕生日をむかえ、50歳になるひとり息子の忠男(塚地武雅)は、自閉症を抱えていた。

予測不能の行動に出る息子に、いつもの呆れ半分のひとりツッコミを入れるが、その後、思わず口をついたのは「このまま共倒れになっちゃうのかね?」という不安だった。

親子が暮らす家の庭には、夫(=父)の思い出が宿る古い梅の木がある。伸び放題の枝は私道にはみ出し、隣家の里村(渡辺いっけい)は苦情を言ってくる。一方、里村家の妻子とは慎ましやかな交流を持つ良好な関係が築かれてもいた。

『梅切らぬバカ』という題名は、諺である "桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿" から取られている。これは、樹木の剪定では、それぞれの木の特性に添った対処の仕方が必要という意味で、それは植物から人の関係にも置き換えられる。

忠さん(忠男)は、最適な表現ではないことを承知の上で言えば "普通" ではない。福祉作業所の仕事に通い、社会との接点も保ってはいるが、そこには、人の目があり、人の手がある。珠子が抱く不安は、気遣いや支援なくしては、息子の生活は成り立たない。最も、身近にいる自分なしでは、潤沢な時間を持たせてはあげられないという親子心だった。珠子は忠男の未来のため、グループホームへの入居を決断する。

以前、電車で珠子と忠男のような親子を見かけたことがあった。年齢的にはずっと若く、息子さんは10代だったかもしれない。先頭車両の運転席に近い場所に立った親子は少し目立った。その時、他の客と少しトラブルが起こりかけた。突発的な行動を起こしてしまった子とそれを止めた母。事なきを得たとはいえ、緊張感が辺りに漂った。

グループホームの近隣住民の反対がそうであるように、当事者目線が存在する映画は論じることを難しくする。綺麗事の指摘を承知の上で言えば、発見を理解に変える、ささやかな手がかりになり得ないか? という問いを映画は囁く。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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