岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

国家の汚職を追求した衝撃のドキュメンタリー

2021年12月06日

コレクティブ 国家の嘘

©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019

【出演】カタリン・トロンタン、カメリア・ロイウ、テディ・ウルスレァヌ、ヴラド・ヴォイクレスク ほか
【監督・撮影】アレクサンダー・ナナウ

報道に我々に何ができるのかという繰返しの問いかけが虚しい

2015年10月、ルーマニアの首都ブカレストにあるライブハウスで火災が発生する。

突然、火の手が上がる。演奏中のバンドのメンバーが「これは演出じゃない!」と警告を発する。炎はたちまち天井をなめるように伝わり広がる。観客は堰を切ったように出口を求め逃げ惑う。これは実際に起きた惨事で、映像はこの後、唐突に途切れる。

『コレクティブ 国家の嘘』は、ルーマニア政府の暗部と、それに対峙し真実に迫ろうとした報道の闘い描いたドキュメンタリーである。

題名にある "コレクティブ" は直訳すれば、集団的とか組織的なことあらわす形容詞だが、火災の現場であるライブハウスの店名でもある。

この火災による死者は27人、負傷者は180人を数えた。

遺族が声を荒げ、政府に詰め寄る…火災の原因に、防火設備の不備に、会場の主催者に、重大な過失があったのか? しかし、怒りはそこに向いていないことが次第に明らかになる。

問題はこの火災の後、数ヶ月の間に亡くなった負傷者が、適切な医療を受けられなかったことを追求するものだとわかってくる。その死者は火災直後の数を上回る37人に及んだ。

火傷の治療には高度な専門性と、それに対応した医療設備が必要となる。火災の負傷者たちの多くが運ばれ、治療を受けることになった公立病院では、この適切な医療体制がなかった。

この問題にいち早く着目するのが、地元の小さなスポーツ紙 "ガゼタ・スポルトゥリロル" に勤める記者たちで、地道な調査や証言をもとに真実に近づこうとする。が、その矢先、事態の核心を握る、と思われていた重要人物が自動車事故(?)で死亡する。

抗議の運動は広がり、政府与党は退陣に追い込まれる。映画の後半では、新たに就任する大臣に焦点をあてる。そこには、同じ政治家ですら呆れ返る、腐敗した政府の汚い闇があった。

他人事ではないと気づくのも、我々に何ができるのか?という問いかけも、散々聞いたことなのが無性に虚しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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