岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

俺は音楽を知らない、音楽が俺を知っている

2018年02月04日

永遠のジャンゴ

©2017 ARCHES FILMS – CURIOSA FILMS – MOANA FILMS – PATHÉ PRODUCTION - FRANCE 2 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA

【出演】レダ・カテブ、セシル・ドゥ・フランス
【監督・脚本】エチエンヌ・コマール

音楽映画としても一流

 ジプシー・スウィングの創始者でヨーロッパ初のジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの第二次世界大戦中の2年間にスポットをあてたノンフィクション映画。
 耳障りのよい心躍るギター演奏で、観客を熱狂の渦に巻き込んでいたジャンゴ(レダ・カテブ)。勝手きままで「俺はみんなが聴きたい曲をやって、それで家族を養っている」と現実から目を背けていたジャンゴであったが、ナチス・ドイツに占領されたフランスでは、彼の出自であるロマ族(ジプシー)への迫害が激しさを増してきていた。映画は文字も書けずギターを弾く以外に才能がない彼が、家族にも危険が及びつつある中で、どのように抵抗し、如何にして生き延びたのかをメリハリのある演出で徹底的に描いている。
 超一流のジャンゴに対し「シンコペーションは5%以下」「ソロは5秒以内」などと細かい指示をドイツ人らしい律義さで出すが、興が乗ってくると指示など無視してアドリブ全開でドンドン盛り上がる。みんなが踊りだして見張りのドイツ兵まで演奏に聞き入るところなど、音楽の持つ感性の力が存分に感じられて圧倒されること請け合いだ。
  多くのロマ族が虐殺され、自身もドイツでの公演を強制されるなど絶望的な状況の中でも、音楽に対しては毅然とした態度をとる。ジプシーを蔑視するドイツ軍将校から「音楽を知っているか?」と聞かれてジャンゴは「俺は音楽を知らない、音楽が俺を知っている」と答える。彼の信念と音楽家としての矜持が響く名セリフは、ズシリと重い。  ジャンゴ役のレダ・カテブは、1年に渡る練習のおかげで、アクロバティックな奏法が再現できており嘘っぽさがない。演奏は現代最高峰と呼ばれるローゼンバーグ・トリオが担当しており、音楽映画としての価値も一流で、映画館で思わず足を踏み鳴らしたくなってくる。左手が大火傷で3本しか動かなかった天才ギタリストの知られざる物語を描いた秀作である。

『永遠のジャンゴ』は岐阜CINEXで2/3(土)より公開予定。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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